天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

いつも時間が足りない理由を教えてくれる一冊

 

いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 『人の豊かさは気にしないでいられるものの数に比例する』ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

「貧すれば鈍する」ということわざがあります。
【故事ことわざ辞典】より。
「貧乏をすると、毎日その生活のことばかり考えるようになるから、人は知恵や頭の回転が衰えてしまい、賢い人でも愚かになるという意味。また、暮しが貧しくなれば、心までも貧しくなるものだということ。「貧すれば鈍す」「貧すりゃ鈍する」ともいう。」

今回ご紹介するのは、そのことわざを最新の行動経済学などを通して証明した本です。

 【いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学 /センディル・ ムッライナタン (著), エルダー・ シャフィール (著) 】

タイトルだけみると、よくある時間管理術のような本かと感じます。だけど、ノウハウを列挙する、対症療法的な話ではありませんでした。結論から言います。忙しすぎて「時間がない」という欠乏感は、頭の中の処理能力を低下させてしまう。つまり頭が悪い状態になってしまう。だから、判断力が鈍って、ますます「時間がない」状態を加速させてしまう。逆に言うと頭のわるい状態というのは欠乏感が生んでいる。
やみくもに効率良く何かを詰め込むような時間の使い方はやめようということです。

なるほどと思ったのは、ビジネスが忙しすぎて、もう手一杯と、困り果てている人と
借金を重ねて、金銭的に困り果てている人の間には共通の心理があって、似たような行動をとってしまうということです。

具体的に言うと、お金の足りない人は無理な借金をしてしまうし、時間の足りない人は破滅的な態度を周りにとってしまう。

その共通の心理というのがこの本のキーワード『欠乏』なのです。借金してしまう人はお金が足りないと欠乏感を感じ、忙しすぎる人は時間が足りないと欠乏感を感じる。
その欠乏を感じてしまうと人は『トンネリング(視野狭窄)』を起こしてまう。頭の中が「足りないものの事」でいっぱいになって、ほかの事が目に入らなくなり、気が回らなくなる。


頭の中の処理能力が落ちて、特に流動性知能が低下してしまう。

*【流動性知能と結晶性知能とは】
http://www.direct-commu.com/terms/terms_intelligence.html

メモリがいっぱいいっぱいになったパソコンみたいなものですね。思考自体が遅くなるし、時にはフリーズしてしまう。そんな状態で、まともな判断が出来るわけもなく、
冷静に考えればバカみたいな行動をおこしてしまう。

まさに「貧すれば鈍する」ですね。例えばギャンブルをしている際に、負けがこむほど、無謀な勝負をしてしまう。というのは典型的なトンネリングに入ってしまったパターンですね。取り返すことしか頭にない完全な視野狭窄状態。冷静なときには絶対取らないような行動をとってしまい、傷口をひろげてしまう。

それから仕事や家のことなどが本当に忙しい時って家の中の片付けや掃除もままならず、めちゃくちゃな状態になったりしませんか?これもトンネルの外が見えていない状態なのかもしれませんね。

しかし逆にいうとトンネルの外へ出てしまえば、見えなかったものが見えるようになって、まるで新品のパソコンのように、サクサクと、僕らの頭も動いて、いろんなことが効率的になり、結果時間も、良いアイデアも生まれるということかもしれません。

この本での著者のメッセージもそのあたりにあるのではないかと思いました。今、忙しがっている自分はトンネルの中に入っているのんじゃないか?時々そんな事を考えなくちゃいけないなとも思いました。

その考え方は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』や『7つの週間』のインサイドアウトの考え方にも共通しそうですね。箱の場合は自分の正当化のためにエネルギーを使いきってしまうというようなことが書かれていたような気がします。それでは処理能力は下がりますよね。

いかにトンネルの外へ出て、処理能力の高い(自分比)状態を維持するか?ここがこの本の情報を得ての課題になりますが、思いついたのは、頭の中の視える化でしょうか。

例えばGTDの手法。頭の中のものを一旦ぜんぶ書き出す。
【15分で分かるGTD – 仕事を成し遂げる技術の実用的ガイド】
http://postd.cc/gtd-in-15-minutes/

紙に書いたり、ディスプレイ上に表示しないと、頭のなかでは、大切な事も、つまらないことも、同じスペースを取りますからね。書き出せば、何が大事なのかというところもはっきりしてきますね。

ちなみに最近ふすまにホワイトボードを貼り付けて、デカデカとした文字でメモを取るようにしています。結構頭の中がすっきりします。
【“ホワイトボードシート”は使える!活用例&人気商品まとめ】
http://iemo.jp/37848

ちょっと自分が最近考えていることに惹きつけすぎたレビューになってしまいましたが、この本自体は、しっかりした事例とデータを集めた行動経済学の本です。「ファストアンドスロー」のダニエル・カーネマンと「ヤバい経済学」のスティーヴン・レヴィットが推薦文を書いていたりします。

2015/11/05