天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

「食べんといかんよ。食べて身体の中に病気と闘う兵隊を作るんよ」考えさせるレシピ本。

 

おやじごはん。―人生をあきらめないおやじは自炊をする

おやじごはん。―人生をあきらめないおやじは自炊をする

 

 料理には関心があります。何故かというと食生活の大切さを身をもって実感しているからです。僕は30代前半くらいまで、とんでもない食生活を送っていました。95%以上外食かコンビニ弁当または菓子パン、カップ麺などなど・・・・(汗)そんな食生活は財布にも、そして身体にも優しいわけもなく、ビンボー、不健康の真っ只中でありました(笑)実際に身体の不調にも悩まされていました。なんとかしなくてはなあと思ってた時に書店でいくつかの「自炊入門」的な本が目に止まりました。食べ物を変えたら身体の調子も良くなるのかなあ・・・・。そんなわずかな期待を込めて、本を読みながら少しずつ自炊を始めていったのです。その結果・・・。

 現在は80%以上自炊です。ビンボー具合はあまり変化していませんが、身体的な健康と、メンタル面での安定は手に入れたと実感しています。これも多くの「自炊入門」的な本のおかげですね。そんな自炊本の中で印象深い一冊があります。

【おやじごはん。―人生をあきらめないおやじは自炊をする 杉村 洋一郎 (著) 】

☆状況を楽しめ!不運と不幸は違う!

この本の著者<杉村洋一郎さん>は経営していた会社が上場寸前までいきながら直前で倒産を経験します。結婚を目前に控えた恋人も去り、杉村さんはうつ病状態に。何もする気がしなくなり、食欲もなくなってしまいます。

そんな時に遺伝性の重い糖尿病を患っている友人が連絡をくれたそうです。

「とりあえず何か食え、コンビニ弁当とかではなくて、自分で自分のために何か作って、とりあえず食え。

毎朝生きて新しい1日を迎えられたことに感謝しているというその友人の言葉に杉村さんははっとしました。そしてその言葉に従い杉村さんは、食材を買いに出かけ、台所の前に立ちました。自分のために自分の食べ物を作り始めたのです。それは少しずつ少しずつ自分の人生を生き直すということでもありました。

そんなエピソードから始まる本書は、料理、自炊とは今まで縁のなかった人への優しいガイドブックです。最低限揃えたい道具、手間のかからないレシピなどが紹介されています。これから自炊したいという人には最適かもしれませんね。だけどこの本の面白さはそれだけではありません。時折はさまれる食に関するコラムがこころに響きます。

たとえばこんなエピソード。

著者の父親が末期がんだったそうです。付き添いのため病室にいると、看護婦長の言葉が耳に入ったそうです。食欲のない患者に対してかけている言葉のようです。

「食べんといかんよ。食べて身体の中に病気と闘う兵隊を作るんよ

 その言葉を聞いて著者は思います。

食べるということは死との闘いなのである。最前線であるにせよ、死が差し迫っていないときの後方支援であるにせよ

なるほどと思いましたね。個人的には生きることを『闘い 』と表現するのはあまり好きではないのですがそのあたりの感覚は人それぞれでしょうね。だけど著者の『食べる事 』に対する認識は響くものがありました。後方支援か・・・・・。

確かに後方支援がなければ、日常は成り立たないでしょうね。即物的な栄養面という意味だけではないですね。精神的なものも含んでいる。もしも身体の中に、そして心の中にも『しっかりした兵隊 』がいないと何か邪悪なものにとりこまれてしまうような気がしてしまう。身体、メンタル両方ともやはり「食」から始まるのかなと。

『しっかりした兵隊 』とは「食べもの」のことかもなあと。そんな感じで考えさせられるコラムがいくつかあります。その他気になる方は本書をご覧ください。


2016/01/25