天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

文学

エンタメ小説界の大エース宮部みゆきの荒神は最悪を想定しつつ最善を尽くすモダンホラー時代劇だった。

荒神 (新潮文庫) 作者: 宮部みゆき 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/06/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る 最近ドラマ化もされた宮部みゆきさんの小説【荒神】を読みました。この小説は一言でいうと江戸時代の東北地方にゴジラのよ…

【書評】呪われた町☆ホラーの帝王は速読を許さない

呪われた町 (上) (集英社文庫) 作者: スティーヴンキング,Stephen King,永井淳 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2011/11/18 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (1件) を見る スティーブン・キングは好きな作家なんで…

【書評】ゲームの王国☆カンボジアを舞台にした政治的な悲恋もの。

ゲームの王国 上 作者: 小川哲 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/08/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 面白い小説でした。物語の枠組みとしては報われないラブストーリーなのかな?と思います。ざっくりいってしまうと悲恋もの…

速読実践9 【母の記憶に ケン・リュウ】その1☆速読からオートマチックで熟読へギアチェンジ

最近速読を試しているわけですが、すこし心配なことがあります。速く読もうとして、表面だけなぞるような薄っぺらい読書になってしまわないか? せっかく出会った本の旨味を味わえない読書になってしまうのではないのか? それは食感や深い後味が目玉の、美…

速読実践8【孤島の祈り】☆サバイブのために有利なのはポジかネガか?

サバイバル物は昔から好きでたくさん読んでます。このブログに書いたものだと、こちらのロビンソン・クルーソー。 lifeofdij.hatenablog.com それから火星の人。 lifeofdij.hatenablog.com ロビンソン・クルーソーが昔の話、火星の人が未来の話しなわけです…

速読実践7【風の歌を聴け・1973年のピンボール・羊をめぐる冒険】小説を速読する意味はあるのか?

鉄板ってありますよね。エンタメでいうと、いつ観ても聴いても何度でも楽しめるもの。映画でいうとゴッドファーザー1と2。音楽で言うと60年代後半あたりのBeatlesとRolling Stonesのアルバム。で、小説の鉄板っていうのは自分的には村上春樹の「鼠三部作」…

【書評】点と線☆面白すぎて速読断念して熟読モードになった

推理小説を速読で読むと楽しめるのか?試したいと思いこの本を読んでみました。 点と線 (新潮文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1971/05/25 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 96回 この商品を含むブログ (180件) を見る 今、100分で…

【書評】ここから先はなにもない☆史上最強クラスのどでかい謎を解決するミステリ

ここから先は何もない 作者: 山田正紀 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/06/20 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を見る これも面白い小説です。さきほど投稿したAnkと重なるところが多いです。人類とは何者なのか?…

【書評】Ank:☆アフリカからやってきたチンパンジーが厄災を振りまきながら京都の街を疾走する小説

Ank: a mirroring ape 作者: 佐藤究 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/08/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 自分であって自分でないもの、だけど、それは自分である、という不思議なもの、それは鏡に映し出された自分。今のとこ…

カラマーゾフのお父さんは億り人だった

今まで読んだ小説の中でいちばん面白かったのは【カラマーゾフの兄弟】です。新潮文庫の原卓也訳が特に好きです。 カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫) 作者: ドストエフスキー,原卓也 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1978/07/20 メディア: 文庫 購入: 43…

誰でも読解力が5割増しになる簡単な方法

山椒大夫・高瀬舟・阿部一族 (角川文庫) 作者: 森鴎外 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2012/06/22 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 世の中には難しい文章がたくさんあります。例えば書いて…

【書評】ミレニアム5復讐の炎を吐く女(*注ネタバレあり*)

ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 上 作者: ダヴィドラーゲルクランツ,ヘレンハルメ美穂,久山葉子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/12/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る ミレニアム最新作読了しました。面白さという意…

【書評】さようなら、オレンジ

さようなら、オレンジ (ちくま文庫) 作者: 岩城けい 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/09/09 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (10件) を見る この小説は良いです。 主人公のサリマの生き方が眩しい。といっても、歯の浮くようなセリフも、いかに…

【書評】おらおらでひとりいぐも☆桃子おばあちゃんの哲学にいいね100回連打した

おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞 作者: 若竹千佐子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/11/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 第158回芥川賞受賞作のこの小説すごい好きです。超のつく傑作だなぁと思いました。基本…

元祖ライフハックの達人ロビンソン・クルーソーのノート術

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫) 作者: デフォー,Daniel Defoe,平井正穂 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1967/10/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 30回 この商品を含むブログ (22件) を見る ロビンソン・クルーソーの最初の100ページく…

文豪森鴎外の舞姫はイヤミスか?という話。

現代語訳 舞姫 (ちくま文庫) 作者: 森鴎外,山崎一穎,井上靖 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2006/03/01 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 20回 この商品を含むブログ (29件) を見る はじめて森鴎外を読みました。夏目漱石は好きなので多少読んでるん…

【書評】ネバーホーム 男装した女性が南北戦争に従軍する話なんですが・・・

ネバーホーム 作者: レアード・ハント,柴田元幸 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2017/12/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 重い作品です。読み終わってから、心にいくつか重石を置かれたような読後感です。設定だけ聞くと、ス…

『翼の折れた(元)天使が再び空を飛ぶ方法は仁王像が教えてくれる(かもしれない)という話』

文鳥・夢十夜 (新潮文庫) 作者: 夏目漱石 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2002/09 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 39回 この商品を含むブログ (154件) を見る 怠けていることは喜びかもしれないが重苦しい状態である。 幸せになるためには何かをして…

西郷どんも登場しちゃう明治を舞台にした大傑作ミステリ

明治断頭台―山田風太郎明治小説全集〈7〉 (ちくま文庫) 作者: 山田風太郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1997/08/01 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 41回 この商品を含むブログ (31件) を見る 今回ご紹介するのは明治2年から4年にかけての東京を舞…

道路掃除夫ペッポがマインドフルネスの達人であったという話

モモ (岩波少年文庫(127)) 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/06/16 メディア: 新書 購入: 41人 クリック: 434回 この商品を含むブログ (298件) を見る 今回久々に再読をしたのですが、やはり面白かったですね。…

サバイバルものとしては究極でしょ!という面白本

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF) 作者: アンディ・ウィアー,小野田和子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/12/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログ (35件) を見る 昔からロビンソンクルーソーとか、不思議な島のフローネ(原題は…

未来は常に過去を変えている、という話も嘘じゃないよなと思わせる小説

マチネの終わりに 作者: 平野啓一郎 出版社/メーカー: 毎日新聞出版 発売日: 2016/04/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (18件) を見る 『未来は常に過去を変えている。』 いまやっていること、そしてこれからやる事によって過去の出来事の意味は変…

エンターテイメント性がより強くなった大人気ミステリシリーズの第4弾

ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 19-1) 作者: ダヴィドラーゲルクランツ,ヘレンハルメ美穂,羽根由 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/09/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 前から読みたいと思って…

ボールを投げる側に回るのもありかなぁとも思ったりした胸締め付け感満載の小説

さくら (小学館文庫) 作者: 西加奈子 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2007/12/04 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 68回 この商品を含むブログ (54件) を見る 西加奈子さんの「さくら」を読んだ。数年ぶりの再読である。Amazonレビューで酷評されている…

片付けをモチーフにした小説

あなたの人生、片づけます (双葉文庫) 作者: 垣谷美雨 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2016/11/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 片づけをテーマにした小説です。片づけに関するノウハウ本は世の中にたくさんあります。しかし、片づけをテー…

本当の勇気とはなにかを考えさせられる小説です。

本当の戦争の話をしよう (文春文庫) 作者: ティム・オブライエン,Tim O'Brien,村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 1998/02/01 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 213回 この商品を含むブログ (102件) を見る これは2017年に読んだ小説の中では一…

ビーチ・ボーイズと村上春樹

意味がなければスイングはない (文春文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2008/12/04 メディア: 文庫 購入: 15人 クリック: 43回 この商品を含むブログ (89件) を見る 村上春樹の文章がいちばん染みるのは「悲劇」を描いているときだと…

ゴーゴリという文豪のぶっ飛び具合にぶっ飛ばされた!

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫) 作者: ゴーゴリ,浦雅春 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/11/09 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (58件) を見る ゴーゴリというと名前だけは聞いたことがあるけれど全く読んだこと…

まるごと受け止める勇気を描いているこの物語に落涙

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF) 作者: テッド・チャン,公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2003/09/30 メディア: 文庫 購入: 40人 クリック: 509回 この商品を含むブログ (394件) を見る 読んだあとにこの小説っ…

苦味と甘味のブレンドが絶妙すぎる大人のためのメルヘンな短編集

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA) 作者: 稲見一良 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1994/02/01 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 14回 この商品を含むブログ (28件) を見る 日本のハードボイルドの中では伝説的な作品と言われているこの小説。実はハー…