天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

【書評】森の生活☆元祖ミニマリストの書きたい放題な手記

昨日投稿したなぞりながら本を読むという読書術。

lifeofdij.hatenablog.com

これがなかなか調子良くて、ついにこの本に手を出しました。

森の生活―ウォールデン (1979年) (岩波文庫)

森の生活―ウォールデン (1979年) (岩波文庫)

 

 今、半分くらいまで読んだんですが、何度か爆笑しました。

読んでてなぜかウーマンラッシュアワーの村本さんを連想してしまったからです。

なんでかっていいますと・・・。

 ソロー氏、めちゃくちゃ毒舌なんですよ。

基本、この本は物質社会を否定する、っていう本なんで辛口な批評が多いのは当然なんですが、その否定の仕方が思い切り辛辣なんです。もちろん真面目な調子で当時の世相を批判するわけですが、これが、なんか、自らが繰り出す罵詈雑言がだんだんエスカレートしていって、ウケを狙ってないですか?ってくらいにノリノリなんですね。その自らに酔うように盛り上がっていく感じが村本さんっぽいなぁと。批判の中でも衣食住の衣においての贅沢というがとにかく嫌いらしいです。

・・・古い服がいかにぼろぼろになりよごれていても、新しい服を買い込むべきではないであろう。鳥と、同様、われわれの羽毛の抜け替わる時期は、われわれの生活の危機でなければならない。カイツブリはその危険を過ごすために寂しい池に引きこもる。同様にまた、内的の勤勉と拡大とによって蛇はその殻をぬぎ芋虫は虫としての衣を投げ捨てる。衣類は我々の最外部の表皮であり、生の煩累にすぎないからである。

〜中略〜

着物は表皮もしくは擬皮であって、われわれの生命とは関わりがなく、ところどころ剥ぎ取っても致命的な損傷はない。

ソローさんにとって、 服って皮の代わりにすぎないんですね(笑)で、その皮の流行に右往左往する人たちを強烈に批判します。

パリの猿頭が旅人の売り物の赤帽子をかぶるとアメリカ中の猿がみんなそのまねをするのだ。わたしは折々、他人の援助によってこの世界で何事にせよまったく単純で正直なことをしとげようということに絶望することがある。それには、かれらをまず強力な圧搾機にかけ、かれらの古い観念をすっかり吐き出せて、それが当分は立ち直れないようにしなければならない。 

最後のあたりのフレーズ。ギャグかよってくらいバイオレンスですよね、あまりにえげつないんで最初に書いたとおりついつい爆笑してしまったというわけです。

で、この本もちろん笑えるから古典と呼ばれているわけではない、というのも実際に読んでみてわかりました。前述したとおり文明批判という部分では本当に辛辣なんですが、加えて自然の様子を描写したりする部分も多くて、これがとにかくキレイな文章なんですよ。読んでるだけで19世紀のアメリカの森の中を散歩しているような気分にさせてくれるらいの臨場感あふれる詩のような文章。

わたしが帰途、鉄道線路に出たときには概して、その黄色い砂の堤は霞んだ大気の中で光をおびてはるばと延び、レールは春の日に照り輝き、われわれとともにまたこの年を生きはじめようとするヒバリやオオルリやその他の鳥の歌が聞こえた。それはのどかな春の日々であった。人間の不満の冬は大地とともに融けつつあり、冬眠していた生命は手足を伸ばし始めた。

で、自然の風景を感じながら哲学的な詩を唄ったりもする。

時は私が釣りに行く小川にすぎない。わたしはそこで水を飲む。しかし飲みながら砂地の底を見、いかにそれが浅いか見出す。そのわずかな流れは滑り去る。しかし永遠は残る。わたしは深く飲みたい。星を真砂とした大空で釣りをしたい。

とても前半であれほど皮肉で辛辣なことを書いてるのと同じ人が書いてるとは思えないほどロマンチックできれいな文章ですよね。でも、こころの内にそのような美をもっている人だからこそ、表層的な美(みたいなもの)を許せない、だから批判も舌鋒鋭くなってしまう、ということだったんですかね。

読んでてキャンプ行きたいなぁとか思ってしまいますし、そういう意味ではナチュラリストの元相なんでしょうし、衣食住に関しての記述を読めば、ミニマリストシンプルライフの元祖でもあるんだろうなぁとも思えます。そして今の時代にこの内容でブログとして発信していたとしても、すごい人気ブロガーになるだろうなぁというくらい書いていることの本質はまったく古びていないですね。。

で、話は変わりますけど、よく若い頃にこの本に出会えてたら!と思う本ってありますよね。この本に関しましては、若い頃に出会わなくてよかった、と思いました。といいいすのは、やっぱりこのソロー氏の世界に対する感じ方、そして描かれる森の中で生き方。ほんとカッコイイし、美しいんですよ。だからこの本が世界中でたくさんの人にとってのバイブルとなってるのも納得できます。もしも、私が若い頃にこの本を読んでいたとしたら・・・間違いなく世捨て人となってますね。だから、若い頃に出会わなくてよかった、と心から思うのです(笑)