【書評】カイロ大学☆アラブ世界の入門書として勉強になった。
先日映画のアラビアのロレンスを観て、中東の歴史に興味が出てきました。ちょっと勉強しようと思っていたんですが、ちょうど良い本が見つかりました。
本書は3つのパートにわかれています。最初の第一章では、笑える感じの、アラブ面白プチ情報と独特のアラブ流交渉術が紹介されています。まずご紹介したいのは面白プチ情報・・・。
エジプトでは昼寝の習慣があって「カイルラ」と呼ばれているらしいです。で、昼寝といえばスペインの「シエスタ」が有名ですが、もともと、アラブがスペインを占領していたときに、習慣となったものだそうです。
それからモスク。アラブ世界を全く知らない私なんかすると、モスクというと、かなり敷居の高い場所というイメージがありました。ところが、もともとモスクとは、集う場所、憩いの場という意味の言葉で、誰でも出入りが自由な場所だそうです。そして建物の中は外気に比べてかなり涼しくて、昼寝をしている人も多いそうです。ちょっと意外な感じですね。
それからアラブ流交渉術ですが、これ著者のネタかってくらいに面白いエピソードが書いてありました。著者が超満員のバスに乗っていたら、なんと靴の紐を盗まれた。で、困ったなぁと思いつつ、街を歩いていると、明らかに自分の靴紐を売っている露天商を発見。で、そこから著者と露天商の交渉が始まるんですが、これが笑えるんです。
そして次の第2章から第6章には、この本のメインとなるカイロ大学の歴史です。この大学を作った人たちや、卒業した人たちに焦点をあてながら、大学の歴史をざっとまとめてあります。
卒業生のなかにはサダム・フセインとかアラファトやザワヒリなんかがいます。歴史に名を残す人がたくさんいるわけです。だから、カイロ大学に関わりのあった人たちを追っていくと、ある程度中東の現代史がわかってしまう、という感じのようです。
それから、私なんかは全然知識がなかったわけですが、アラブ民族主義とアラブ社会主義とイスラム主義この3つの関係性が少しだけわかって、とても勉強になりました。
そしていちばん印象に残ったのはサダム・フセインの在学中のエピソード。大学時代、ほとんど友達はいなかったらしいです。だけどアパートの門番とだけは、とても仲がよくて、湾岸戦争まではずっと贈り物を届けていたということ。
で、カイロ大学といえば小池百合子都知事が卒業生なんですね。こんな言葉が引用されていました。
「カイロで5年間過ごしたことで〜中略〜世界は欺瞞に満ちていて、リアルな判断が必要か、異文化の中で学んだ」 サンスポ 2017年4月25日
なるほどね~と思いました。小池都知事はタフな方というイメージがありますが、このカイロ大学で身につけた強さなのかもしれませんね。
それから最後のパートはカイロ大学への入学方法と著者自身の留学体験記です。これも面白いです。カイロ大学のハードさにも驚きますが、それよりも著者のたくましさに驚きます。
なにかと話題になることの多い中東ですが、エジプトを中心にした、アラブの現代史をおおまかに学ぶには最適な入門書になるかと思います。
そういえば積ん読のこんな本もあった。今度読まないと。