まるごと受け止める勇気を描いているこの物語に落涙
- 作者: テッド・チャン,公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/09/30
- メディア: 文庫
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読んだあとにこの小説って何が書いてあったんだろう?と反芻すると、読み終わった直後よりも、正解ではないのかもしれないけれど自分なりの答えが浮かび上がってきて
うわぁ~と全身が締め付けられるようなまたは何か見えない力強い「何か」に抱きしめられるような感覚になるときがあります。今回ご紹介するのはまさにそんな小説。
主人公は言語学者なんですね。で、宇宙からやってきたコミュニケーションのとれない異星人と意思疎通するために政府に雇われる。最初は異形の異星人との意思疎通は出来ないわけですが彼女のアイデアをもとに少しずつ彼らの言語と文字(にあたるもの)を
理解できるようになり彼らの文字を使って思考することもできるようになる。
すると彼女の意識は少しずつ変化していくんですね。まぁ異星人の文字を使って思考できるようになるわけですから考える道具が変わってくるというわけで当然導き出される答えも変化してくる。
で、その新たな考え方によって彼女はある重大な決意をするんですね。決意をするというか、選択をするというか。どんな決意かということを書くとネタバレにしかならないので書きませんがその決意を読んで私の脳裏に浮かんだ言葉は「会うは別れの始めなり」という言葉でしょうか。
別れそれも悲劇的な別れがやってくるとわかっていてもそれも我々小さな存在の力の及ばぬところでその悲劇はすでに決められているちっぽけな出来事のひとつだったとしてもそれでも「選ぶ」ことを続けられるかどうか?
そんなことをこの小説って何が書いてあったんだろう?と反芻したときに脳裏に浮かんできて私はうわぁ~と涙してしまったわけです。オススメです。
ちなみに「メッセージ」という映画の原作らしいです。
2017/09/01