大槻ハンチョウという小悪党に人生の幸福を教えてもらえるマンガ
人間って面白いですよね。似たようなことをしていて同じような身体的反射を受けながらも状況(コンテキスト??)によって心理的に受ける感情は変わってくる。仕事で汗だくになっても面白くないのに、スポーツして汗をだらだらかくとなんで爽快な気分になるんでしょうか?なーんてことを思ったのはこのマンガを読んだから。
利根川に続くカイジのスピンオフ第二弾ですね。カイジに詳しくない方に向けて
簡単にこのマンガの背景を書きます。
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カイジの世界では巨大消費者金融グループ「帝愛」が世間で君臨しています。イメージ的には武富士が全盛の頃という感じでしょうか。で、主人公カイジは借金を返せずに、
帝愛グループが運営する地下にある強制労働所(建設現場)で完済するまで強制労働させられます(もちろん泊まり込みでそこからは出れません)
で、本筋のカイジのストーリーの中ではその建設現場でカイジたち労働者から搾取して私服を肥やす小悪党な先輩労働者としてこのスピンオフの主人公大槻ハンチョウが登場します。
このハンチョウというのがなんとも小賢しいというか小狡い小悪党なんですね。帝愛グループにうまく取り入って現場内にて酒や煙草を(マージン大幅に乗せて)販売する権利を得たり、イカサマ博打を開帳して大儲けをしたりする。まぁ、かなり嫌な奴、時代劇でいうと典型的な越後屋タイプ。
だけれども、この大槻という男。妙に人の本質をついた含蓄のある言葉を語るんですね。名言の多いカイジですが、その中でも珠玉とも言えるこの言葉。
明日からがんばるんじゃない…今日…今日だけがんばるんだっ…!今日をがんばった者…今日をがんばり始めた者にのみ…明日が来るんだよ…!
このまっとうすぎる超名言、実は小悪党大槻ハンチョウの言葉なんですね。だから一部に(私も含め)妙に愛された不思議な悪役だったわけです(笑)
で、今回ご紹介するスピンオフ作品の話に戻りますとこの強制労働所では一定額のお金を払えば一日(24時間)だけ、シャバつまり普通の世の中に出ていくことができるというシステムがあります。
普通、そうした権利を行使する場合、誰でも時間いっぱい飲んだり食ったり遊んだり、となるわけですがこの大槻ハンチョウの遊び方は一味も二味もちがうんですね。
例えばある一日の動きを追うとまず向かうのは紳士服量販店。地味なビジネススーツを買う。どこかかしこまった店でも行くのかと思いきや入るのは、どこにでもある立ち食いそば店。
時間は昼飯時ちょっと前。ハンチョウはそばをたのまず単品で天ぷらなどを頼みついでのように生ビールを頼む。ゴクリと飲んでいるうちに、短いランチタイムのサラリーマンたちが店内にはうじゃうじゃと来店してそそくさと立ちながらそばを食い始める。
そんなサラリーマンたちを尻目にハンチョウは生ビールをおかわりする。周りのサラリーマンたちからすれば自分たちと同じようにビジネススーツをきていながら昼間からグビグビとビールを飲んでいるこの男は何者?もしやそれほどの気ままなランチが許されるすごいビジネスパーソンなのではないのか??と羨望と嫉妬の視線を浴びる。その視線に気が付かないようにハンチョウはまたビールをなんともうまそうに飲み干す・・・・。
冷静に考えれば立ち食いそばで生ビールを飲みながら天ぷらを食べてるだけなんですけどね(笑)ハンチョウのこの一日をいかに楽しむか?まさにゲスの悪知恵の極地ではありますが見事に人がいかにして気持ちよくなるのか?という一面を完全に理解している人の行動ではないでしょうか(笑)
そしてもうひとつ言えるのは人の喜怒哀楽って実際に何をしているのか?何をしたのか?というよりも状況次第、受け取り方次第なんじゃないでしょうかね?
まぁついでに喜怒哀楽だけではなくて人の幸福感とかも同じなんだろうな?とも思っちゃいますね。今、求めているのは手段なのか?目的なのか?なんてこともついでに考えちゃいますね。
2017/08/13