天然誤読生活

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ストレスを力に変えるためにひたすら要約してみた

 

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

 

 

<イントロダクション>

著者は世間一般で云われている通りストレスは害だから取り除こうと指導してきた。
しかしその考えは間違っているということに気がついた。最近の実験によるとストレスが身体精神の悪影響を与えているというよりも「ストレスが悪い」という思いこみこそが、悪影響を与えているという結果が出てきたからだ。

☆ポイント
『ストレスは健康に悪いと思い込んだ場合に限って有害となる。 』

?ポイント
『ストレスは時に人を賢く、強くすることもある!という意外な新事実がこのあと解明されるのか??』

 

<第1章 ストレスは役に立つと思うと現実もそうなる>

ストレスを受けるとコルチゾールとDHEAが分泌される。コルチゾールは緊急事態用で
消化機能、生殖機能などを抑え、目の前の事に集中させる作用をもつ。DHEAは逆にコルチゾールの作用を抑える働きをもち、ストレスの経験を通じ脳の成長を助ける。問題はどちらが多く分泌されるか?DHEAの割合が多いと「成長指数」が高いとされる。

 

成長指数の高い大学生は、努力を厭わずに粘り強く勉強し成績が良い。軍隊のサバイバル訓練では、成長指数の高い人は、問題解決能力が高く、集団から脱落せず、PTSDになりにくい傾向が見られる。DHEAの割合を高め成長指数を高めることは意外に簡単で
それは「ストレスには良い効果がある」という事を意識するだけ。実際の実験の内容は本書にて。

<まとめ>

ストレスは良いものということではないが、全面的に悪いものでもないようだ。良い面とは具体的にはどんなものなのか?次章以降に説明があれば良いと思う。

正直この章の後半、マインドセットの話が出てきたりして話が広がりすぎイマイチ焦点がつかめない。果たしてこの本は最終的に、何が言いたいのか予想がつかない(笑)

続く
2016/04/01

<第2章 ストレス反応を最大の味方にする>

我々は今まで常識としてストレスは敵であり、いかにストレスを少なくするかという事を考えてきました。しかしいくつかのデータによれば、ストレスによってその後良い影響を得ることもあると分かってきたのです。

例えば本書ではこんなケースが紹介されています。PTSDの予防や治療に現在もっとも効果が期待されている方法は、ストレスホルモンの注射なのだそうです。例えば精神医学専門誌で報告された症例では、5年前にテロ攻撃に遭遇した結果、PTSDを発症した50歳の男性の症状が、ストレスホルモンの投与によって改善したそうです。一日10ミリグラムのストレスホルモンを3ヶ月投与した結果、PTSDの症状が減少し、テロ事件のことを思い出しても、以前ほど激しい恐怖や苦痛を感じなくなったそうです。

 

ストレスは従来の常識の通り害になることもありますが、上記の様にPTSDの改善に役立つなど、実は良い部分もたくさんあります。つまりストレスをむやみに恐れるのではなく、うまく利用する方法を考えるべきなのです。そのための方法として本書では新しい情報とストレス利用法が提案されています。

 

新しい情報ですが、ストレス反応にはいくつかの種類があるということです。いわゆるストレス反応として思い浮かぶのは、『戦うか逃げるか反応 』というものではないでしょうか?警戒態勢をとって瞬時に行動できるようになる状態。まずこれがひとつめですね。

ふたつめは『チャレンジ反応』です。ストレスがあってもしそれほど危険でない場合に
チャレンジ反応に切り替わります。戦うか逃げるか反応と同じく集中力が高まりますが
むやみに恐怖を感じることがないストレス反応です。フロー体験のようなものでしょうか。

みっつめは『おもいやり、絆反応 』です。ストレスを感じると、多くの場合、人とのつながりを求める気持ちが強くなります。それは「愛の分子」や「抱擁ホルモン」と云われるオキシトシンが分泌されるからです。このオキシトシンの作用は、周りの人の考えや感情に気づき理解する力が増します。また脳の恐怖反応を鈍らせ、人を勇敢にもします。

 

このストレス反応にはいくつかの種類があるというのが新しい情報です。そしてストレスの上手な利用方法とは、『戦うか逃げるか反応』が合わないストレスの場合に
他の反応を自分で選ぶということです。例えば資格試験本番などの緊張する場面で、
流されるままに『戦うか逃げるか反応』に従うのではなく『チャレンジ反応』を自分から選択するということです。当然そういった場面で良い結果を生むのがとちらかというのはわかりきったことですね。

 

さてここで根本的な事を考えてみましょう。ストレス反応は何のために私達に備わっているのでしょうか?わざわざ困らせる為にあるわけではないのです。本書ではこの章の最後にストレスは我々の味方になりうる事を学んだある老夫婦のエピソードが紹介されています。

 

レヴァとラクシュマンは著者のストレスに関する講義をきいたあと飛行機でオーストラリアに向かいました。一人娘がまもなく出産予定だったのです。ラクシュマンは心臓病を患っていおり、電気を使った治療器具を手放せません。ところが今回の飛行機に電源の差し込み口は天井にあり、プラグの接続がゆるみがちでした。レヴァは時折座席の上に上がってゆるんだブラグを直さなくてはいけません。もしも治療器具が止まってしまったら大変だからです。ところがレヴァが膝が悪くその動作が非常につらく体中にストレスを感じました。そんな時以前ならただやってくるストレス反応に流され、ますます状況は悪化したでしょう。ところがレヴァはストレス反応は『戦うか逃げるか反応』だけではないことを思い出しました。ストレスでイライラするのをやめて、わたしたちの身体では今オキシトシンが分泌されている。だからふたりは助け合える。心臓も大丈夫だと、考えることを選んだのです。意識的に気持ちを切り替えたのです。
「もうすぐあの娘と生まれてくる孫に逢えるんだ」と励まし合いました。するとつらい長旅にも感謝の気持ちが湧いてきたのです。

私達はこの本で学んだ知識を活かす事によって、主体的にストレス反応を選ぶ事が出来るのです。それがストレスを最大の味方にするという事なのです。

第1章は正直面白くもなんともなかったのですが、この第2章は大変おもしろかったです。第3章はどういう話になるのでしょうか?
続きが楽しみですね。
2016/04/02

<第3章 ストレスの欠如は人を不幸にする>

『エベレストの中腹は、今夜も寒くて真っ暗だ。』

2013年、スタンフォード大学の研究者たちが、18歳から78歳までのアメリカ人を対象に調査を行いました。次の言葉にどれくらい共感しますか?と質問したのです。『全体的に考えれば、私は生きがいのある人生を送っている』次に研究者たちは、この言葉に共感した人たちとしなかった人の相違点に注目しました。その結果は驚くべきものでした。人生で強いストレスを感じている人ほど、自分の人生に生きがいがあると思っている人が多かったのです。なぜでしょうか?

 

しかし考えてみれば当たり前の事かもしれません。もしも人が自分の役割を考え、目標意識を持てば持つほど、ストレスは避けられないのは当然だからです。ストレスは重要な目標に向かう際に生じる副産物なのです。生きがいのある人生にはストレスが付き物なのです。

 

つまりストレスを感じるということは、うまくいっていないということではなく自分にとって大事なことにどれほど熱心に取り組んでいるかを表すバロメーターであるということもいえます。そしてどうでもいいことにはストレスは感じないのです。ストレスとは自分にとって大切なものが脅かされた時に生じるものなのです。

 

それでは大切なものとは何でしょうか?答えのひとつとしては自分にとっての『価値観』かもしれません。本書では価値観について、ある研究結果を紹介しています。スタンフォード大学の学生たちが実験に協力した研究です。それは冬休みの間に一定のルールに沿って日記をつけるという事です。ひとつのグループには、自分にとって重要な価値観はなにか、そしてその価値観に結びつくようなどんな活動を行ったかを日記に書くように指示しました。もう一方のグループには、その日にあった良い出来事を書くように指示しました。3週間の冬休みが終わり、それぞれ、どのように過ごしたか質問しました。価値観について書いた学生たちは、他の学生より健康状態が良く、精神的にも調子が良い事がわかりました。研究者たちは結果を分析してみました。学生たちは自分の価値観について書くことにより、自分の人生に意味を見出すことができたのです。それまではただ我慢してやっていたこともストレスではなくなりました。それどころか自分の価値観を表現する行為になったのです。

ある学生は年下の妹を車で送ってやるのも自分なりに家族を大事に思っている気持ちの表れだと思うようになりました。日記をつけることで日々の些細な出来事が、実は自分の大切な価値観と結びついてることに気づいたのです。それまでイライラしてしまったはずの出来事にも自分なりの意味を見出せるようになっなのです。つまり価値観を明確にすることによってストレスを感じるかもしれないけれど同時に生きがいも得ることが出来るということですね。

 

ここからこの第3章を読んでの自分なりのまとめです。もしもこれまでの人生から、ストレスの多かった日を全て取り除くことが出来たとしたらどうなるでしょうか?あなたの人生は理想の人生に変わるのでしょうか。だけど考えてみて下さい。今あなたが大切にしているものと出会ったきっかけを。例えばパソコンで文章を構成し直す時のように、つらいストレスの日だけを範囲指定してデリートしたとします。その結果完成したあなたのストーリーは無駄のない、シンプルで整った文章になるのかもしれません。

同じようにもしもつらい記憶を消し去る事に成功したあなたの人生はどこに出しても恥ずかしくない整ったストーリーになるのかもしれません。だけどその整った人生の中には、もしかしたら今あなたが最も誇りに思っている経験、そして目の前にいるあなたの大切な人達との出会いも消えてなくなってしまうことになるのではないでしょうか。

 

つまり生活からストレスがなくなったら、不快な思いをする事は減るかもしれませんが、同時に生きる意味もなくなってしまいます。ストレスを避けるのではなくてストレス反応を自分で選択するのです。シンプルで整ったストーリーは、映画や物語の中でたまに味わえば良いのです。我々はストレスに満ちてはいるけれど、主体的にストレスに対する反応を選び取ることにより、泥まみれになりながらも、そこから自分なりの宝石をつかみ取る事に力を注ぐべきなのです。

続く
2016/04/03

<第4章 向き合う 不安は困難に対処するのに役立つ>

これから数百人の前でスピーチをする友人に、あなたはアドバイスを求められたとします。とてもストレスのかかる場面です。あなたはどんな言葉をかけてあげますか?おそらくあなたを含めほとんどの人は緊張をほぐすように、リラックスしろ!と声をかけるのではないでしょうか?

しかしこの第4章では、その常識を覆します。ストレス反応を利用する事によって、つまり不安そのものを前向きに捉えることによって、パフォーマンスを向上させる事が
可能であるという事実を解き明かします。心理学教授の、ジェレミー・ジェイミソンはこう言っています。
『私たちはストレスは害になるという情報に翻弄されている。』

 

例えば学生を対象に実験を行ったところ、落ち着いてテストを受けた学生より、テスト中にアドレナリンの量が急増した生徒の方が、成績が良かった事がわかったのです。また軍隊、連邦警察でもストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が多かった兵士や、心拍数の増加が大きかった警官がより高いパフォーマンスを発揮したことも証明されているのです。

 

つまりプレッシャーの中で実力を発揮するには、リラックスしているよりも、ストレスを感じていたほうが良い結果が出る場合が多いのです。しかしそうはいっても現実はどうでしょうか?我々は今までの経験の中で、様々なプレッシャーを感じた場面で、
少なくはない失敗をしてきました。そのためストレスは害であると、度々思いを強めてきたわけです。

 

ここでひとつ発想の転換が生まれるのですが、もしもその思い込みをひっくり返して、
ストレスは味方であると思い込むことが出来たら結果は変わるのでしょうか?

ジェイミソンは試験前の大学生を対象に実験を行いました。まずストレス反応を測定するために唾液を採取しました。その後、半数の学生にはストレスに対する肯定的なメッセージを説明、残りの半数には特に何も行いませんでした。その結果、肯定的なメッセージを受け取ったグループは対照群のグループよりも良い成績をおさめるという結果になりました。そして試験後に再度唾液を採取し、ストレス反応を確認したところ、
ストレス増加が激しかった学生の内、肯定的なメッセージを受け取った学生の高成績が認められました。

 

つまりストレス反応をプラスであると認識している場合に限って、ストレスは味方になるのです。つまり同じストレスを受けたとしても、ストレス反応によって結果はおおきく違ってくるのです。第2章を振り返りましょう。ストレス反応には、いくつかの種類があります。代表的なものとして闘うか逃げるか反応というものがありました。
(この章以降は『脅威反応』と表記しています。)
そして似たような反応として『チャレンジ反応』というものがあります。そして繰り返しになりますが、やはりストレス反応を主体的に選ぶ、基本的には出来るだけ『脅威反応』ではなく『チャレンジ反応』を選択するということが大事なポイントになるようです。

 

ここでふたつの反応の違いをまとめておきましょう。両方とも行動を起こす準備を整えるという点では同じです。具体的には心臓の鼓動が早くなります。脅威反応のときは、身体は物理的な危害を予期します。迫り来る戦いによる出血を最小限にとどめるため、体中の血管が収縮します。チャレンジ反応のときには、機器を予期していないため身体はリラックスし、血流量は最大となり、大きな力を出せるように準備します。血管は収縮せず開いたままので、心臓の鼓動も力強くなります。心臓が収縮するたびに大量の血液を送り出します。ですからチャレンジ反応が起きた時のほうが脅威反応が起きた時より力が出るのです。つまりプレッシャー状態で、どんなストレス反応が起きるかによってあなたがどれだけ実力を発揮できるかが変わってくるということです。

 

ということは冒頭の問いに戻りますが、これから数百人の前でスピーチをするという友人に贈る最適なアドバイスはこういう言葉のようです。
「体にストレス反応が起こるのは、状況に対処するのに必要なエネルギーを結集させるためです。心臓がドキドキするということは、それは心臓があなたの体と脳に酸素をたくさん送ろうとがんばっている証なのです。」

この考えを友人が納得できれば、多くの場面で「脅威反応」が「チャレンジ反応」に変わり、プレッシャーの中でも実力をフルに発揮出来るのではないでしょうか。手に汗をかいているのに気づいたら初めてのデートを思い出して下さい。手に汗をかくのは、自分の求めているものがそばにあるからです。緊張や不安で落ち着かないのは、あなたにとって大切な意味があるというしるしなのです。ストレスはあなたの味方なのです。
2016/04/04

 

<第5章 つながり いたわりがレジリエンスを生む>

「自分なりに役に立てたことは嬉しく思っています・・・。でもこういうときに何かをせずにはいられないのは、誰かを助けたいのはもちろんですが、自分のためでもあるんです。」
この言葉は9・11テロのあとに、世界貿易センターで救助隊員のために、炊き出しを行ったある女性の言葉です。

 

第5章ではストレス反応の3番目、「思いやり絆反応」のお話です。上記の例のように強いストレスを受けた際に、人助けをすることによって絶望感が和らぐしつらい経験をしているときこそ、人間は利他的になるのです。ちょっと意外な感じもしますよね。そんな時って周りのことを考える余裕なんかない!って、感じですが、人間ってやっぱりもっとすごいんです。そんなお話がの第5章「思いやり・つながり反応」のお話です。

 

ちょっと考えてみて下さい。進化論的な観点から見ると、ストレスがかかるような危機の場面で、人が自然に利他的になるということは当然なのです。「おもいやり絆反応」が備わっているのは、なにより確実に子孫を守るためなのです。子グマたちを敵から守ろうとするハイイログマの母親や、炎上する車体から息子の身体を引っ張って助け出そうとしている人間の父親の姿を想像してみてください。

 

そんな場面で重要なのは、我が身を守り危機から逃げ出そうとする本能を抑えこむ力が必要なのです。その正体が「思いやり・絆反応」なのです。「思いやり・絆反応」は恐怖を弱め、希望を強めるための生物学的状態のことなのです。具体的には「思いやり・絆反応」が起こると脳は3つのシステムを活性化します。

 

オキシトシンが分泌されることにより、思いやりが強まり、つながりを求め、相手を信頼する気持ちが強まります。さらに脳の恐怖中枢の働きを抑え、勇気を強めます。

ドーパミンを分泌する。やる気が強まり、一方で恐怖が弱まります。身体の行動を促進し、プレッシャーのせいで動けなくなるの防ぎます。

セロトニンが増えます。知覚や直感や自制心が強くなり、なにをすべきかを瞬時に理解し、最大限の効果をもたらす行動がとれるようになります。

 

つまり「思いやり・絆反応」が起こると、思いやりが強まり、勇気が湧き、頭の回転が早くなるのです。勇気と希望が湧いて、思い切って行動に出ることができます。さらに状況認識能力が高まり、懸命に対処できるようになります。

 

ストレス反応の3つ目「思いやり・絆反応」は子孫を守るため発達したものです。ストレスを感じるような危機的な場面でこの反応は発生するわけですが面白いことにその逆もありうると著者は主張しています。
『あなたが周りの人を助けようと決心するとき、体はいつでもこの状態になります。』
つまり誰かをいたわろうとすると、あなたは勇気が出てきて、希望が生まれるのです。

情けは人のためならずという言葉がありますが、このケースでも同じです。もしもあなたがつらい場面に遭遇して強いストレスに苛まれた時は、人間の尊い本能のひとつでもある「思いやり絆反応」に素直に従い同じように苦しんでいる人の支えになるようにするのです。

 

それは相手のこころを少し軽くするのと同時に自分自身のこころをささえる力ともなるのです。そうしてお互いに新たな一歩を歩き出すのです。どうやら人間というのはもともとWinWinの関係が備わっているということなのですね。人間ってやっぱりすごいです。『他者へのいたわりが勇気と希望を生む』
2016/04/05

 

<第6章 成長する 逆境があなたを強くする>

さてついにこの本も最終章を迎えました。この章のキーワードは『成長』です。第6章 は著者のこんな質問からスタートします。
「これまでの人生であなたが最も成長したと思える時はいつでしたか?
そしてその時、ストレスを感じていましたか?」

いかがですか?この質問に対して多くの人が、思い浮かべた時期には多かれ少なかれストレスがのしかかっていませんでしたか?しかしそのストレスを乗り越えて結果的に成長したと今感じているのではないでしょうか?

 

ここで自分自身を振り返ってみるとストレスを乗り越えて成長した事もありましたし、
逆にプレッシャーに押しつぶされ成長の機会を逃した事もありました。ところで成長とは具体的にはどういうことなのでしょうか?本書には成長に関してこんなストーリーがありました。一部当方で脚色してお送りします。

 

ジェニファーはひどい落ち込みからもう2年も経つというのに立ち直れませんでした。
2年前突然理由もわからないまま母親が自殺したのです。自分に何か出来ることはなかったのか?ずっと自分に対しての無力感に押さえつけられたまま心の中では立ち上がることさえ出来ないような状態でした。

 

そんな時ある広告が目に止まります。それは地元小学校のペンキ塗りのボランティアです。ジェニファーは応募することにしました。ペンキ塗りと聞いて、母親がたまに聞かせてくれた思い出話を思い出したからです。

 

両親の馴れ初めの話です。母親は看護師で、父親は同じ病院に勤務する外科医でした。
ふたりは仕事で関わることもなく面識はなかったのですがある日病院の建物のペンキ塗りを職員で行っていた時にふたりは出会い、その後結婚してジェニファーが生まれたという話です。

 

ジェニファーはペンキ塗りなど、今までしたこともなかったですが、やり始めるとなぜか集中しました。みんなが休憩してい時も手を休めることもなく作業を淡々と続けました。その時のことを振り返ってジェニファーは言います。
「たしかにそこに母がいたんです。そこで父と母と一緒になってペンキを塗っていたような気がずっとしていたんです。」
その時、悲しい出来事のあと、初めて希望のようなものを見つけたような気がしたそうです。母は亡くなってしまったけど、こうしてつながっていられるんだと思えたのです。

その後ジェニファーは「ホープ・アフター・プロジェクト」という小さな団体を立ち上げました。愛する人を亡くした人達が、亡き人を偲びながら参加する奉仕活動の企画を手伝うグループです。子猫の保護収容施設への訪問ボランティアや、国外へ派遣されているアメリカ軍兵士たちへの救援物資の箱詰めプロジェットや、がん患者のための一日ボランティアなど様々な活動を行っています。

 

このストーリーには特にドラマティックな成長の要素などはないかもしれません。
しかし悲しみや苦しみを消し去るのではなくてしっかりと受け止めることによって
少しだけ前に進んでいったひとりの人間の物語があります。そのほんのすこし前進のことをもしかしたら成長というのかもしれません。

 

そして我々はそんな誰かの再生の物語を読んだり聞いたり、映像を観ることによって、希望や勇気をが湧き、自分の人生にも変化を起こそうという意欲が湧いてくるのです。
また誰かの話だけではなくて、自分の中にも再生の物語はあるはずです。

 

この本の最後のエクササイズは『自分の回復の物語を書いてみる』です。

「ジャーナリストがあなたを取材するように、あなたが危機を乗り越え、成長した時の事をストーリーとして自分自身で書いてみるのです。その出来事に関連する思い出のものがあれば写真にとり、文章と組み合わせてコラージュするのも良いでしょう。誰かに見せる必要はありません。あなただけの大切な物語なのですから。」

 

世の中にはどうしようもない悲劇というものが時折起こります。ストレスに押し潰さそうなことも多くあります。その大きな力に対して我々ひとりひとりが出来ることは
とても小さいのかもしれません。いつか起死回生の奇跡的な出来事が起きて、状況が劇的に良くなるなどということはないかもしれません。

しかしこの本で何度も示しているように、状況に対して我々は態度を選ぶことは出来るのです。わずかでも成長するということを選ぶことも出来るのです。

 

この本においてはストレスに対して起こるストレス反応に対して知識を深めることによって自分自身で反応を選択する力を得るということを学びました。それは自分で選択権を獲得したということです。つまり自分の態度を自分で決める自由を得たという事です。

 

我々人間の自由とは空を飛ぶことでも勝手気ままな人生を生ききるということでもないでしょう。逆境に立たされた時、悲しみに取り囲まれた時それでもその時の態度を他の誰でもない自分自身で選び取ること。それが自由ということではないでしょうか。その自由を獲得するためにはストレスを避けて通ることは出来ないのです。そしてそのストレスとは時に我々の行先を知らせてくれる味方でもあるのです。

『1日の終わりにどっと疲れを感じるのは、ふたりとも精一杯がんばっているからだね。』

長文ここまで読んでいただきありがとうございました。
読了です。
2016/04/06