天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

加齢による物忘れを恐れず記憶の達人を目指しちゃおうかなと思いついた面白本。

ワタクシ物忘れが激しいんですよね、最近。というかずいぶん前から(笑)。で、どうにか対策はないかなぁ?ということで記憶に関する本を何冊か読んだんですが、あぁなるほど、と思うところは多々ありますが、で、実際どうすりゃぁいいの?ということに関しては現実的な対策な見つからず、というところでした。
ところが、今回読んだ本によって、物忘れ問題に対して、コペルニクス的展開を迎えることになりました。この本です。

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由

 

 それは記憶に関しても攻撃は最大の防御なり!でいったらどうだろう?という思いつきです。なぜそんなことを思いついたか、そして、それはどういう意味か?といいますと・・・。

 まずは本書の内容から。

著者は若いアメリカ人ジャーナリストです。あるイベントの取材に行くことになりました。それは主に記憶力を競いあうという、いわば知能のオリンピックのような大会です。

どんなことをするかというと、バラバラの並び順のトランプの順序を記憶して、正確に再現したりすることなどを競ったりしてチャンピオンを決めるのです。著者は参加者たちのびっくりするような記憶力に驚きます。一方、その異常な記憶力が今の時代にどれほど役にたつのだろうか?という極めて普通の感覚を持ちます。まあスプーン曲げがなんの役に立つのか?みたいな感じですね。

そして大会の主催者の一人である、トニー・ブザンという人物(マインドマップを考えた人として有名)と話をして、とても胡散臭い感じがした、ということも、正直に本文中に書いています。

しかしブザン氏は著者に対して、自分で記憶術を試して、来年あたりこの大会に参加してみたらどうだい?ということを言いいはじめる。誰だって訓練すればできるからと。
著者はなんか胡散臭いし、そんな化物じみた記憶術が誰にもできるわけがないだろう、とは思いつつも、参加者であり後にコーチとなるエドとの出会いがきっかけとなり、訓練をはじめ大会を目指すことになります。

その実際の訓練の様子が面白いんです。笑えるというわけではないのですが、普通の人が記憶術をトレーニングするというのはこういうことなんだなぁとリアルに描かれています。

で、記憶そのものに関する考察も興味深いんですよ。記憶術とはいつごろ生まれ、本来どんなものだったのか?ということを歴史をさかのぼって調べたり・・・。

またそもそも記憶とはいったいなんなんだろう?ということを知るために、記憶を保持することができない病気の人にあってインタビューしたり、また反対に術を使わずとも、信じられない記憶力を持つ、世界一有名なサヴァン症候群の人と言われる、ダニエルさんと言う方にも何度も会って話をするんですね。この本を書いた人。

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

 

 で、このダニエルさんとのインタビューは意外な方向へ話が進むんですよ。これがスリリング。このあたりめちゃくちゃおもしろいんですよ。

で、話を戻すと、著者は1年間記憶術の特訓をすることにより、本当に全米チャンピオンになるんです。そして、ラストで師匠に尋ねられるんですね。来年も世界大会を目指すのか?と。で、そのあたりで著者は記憶とは一体なんなのか?ということを考察するわけですが、これがまた、リアルに戦って考えた人だけがいえるだろう、ナイスな答えを見つけるんですね。これがこのノンフィクションのラストを締めていていい感じ。この小説を思い出しましたよ。

lifeofdij.hatenablog.com

この短編集に収録されている【残されし者】という物凄い小説があるんですが、つながってきそうな考察ですよ。


で、私の話に戻しますと、今まで防衛的に物忘れというか、記憶力の減退をいかに抑えるか?というディフェンシブな考え方をもっていたわけですが、どうせだったら、この本で書かれている手法を試して、面白いほど記憶力を伸ばしてみても(という遊び的なチャレンジ)をしてみてもいいんじゃないかなぁ、なんて思ったわけです。それが冒頭に書いた攻撃は最大の防御なり、ということです。

物忘れを恐れるんじゃなくて、逆に記憶力の達人を目指すのも面白いんではなかろうか?みたいな(笑)
具体的には記憶の宮殿という手法をやってみたいなぁなんて思っているわけです。あのハンニバル・レクター博士の得意技ですね(犯罪の方ではなくて記憶術のほうですよ、一応念の為・・・)

ハンニバル (字幕版)

ハンニバル (字幕版)

 

 

で、やってみてどうなったのか?は機会があれば今後このブログに書いてみますね。

それから蛇足ですがこの著者さん、記憶力全米チャンピオンになったっていうのに、未だに鍵を置いた場所を忘れたりするそうです。ちょっと面白いオチでした。