天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

【書評】ここから先はなにもない☆史上最強クラスのどでかい謎を解決するミステリ

 

ここから先は何もない

ここから先は何もない

 

 これも面白い小説です。さきほど投稿したAnkと重なるところが多いです。人類とは何者なのか?どこからやってきて、どこへいこうとしているのか?系のフィクションです。

lifeofdij.hatenablog.com

Ankチンパンジーを主人公にしたパニックホラーでしたが、こちらの【ここから先はなにもない】はSFベースのミステリです。謎解き系です。そしてその謎というのが、とつもなくスケールのデカイ謎です。果たしてこの謎を合理的に解決できる解決編はやってくるのだろうか?と心配になるくらいのビッグクエスチョンです。で、どんな謎かといいますと・・・。

映画にもなった宇宙探査機の はやぶさってあったじゃないですか。

www.jaxa.jp

この物語では同じような探査機が地球に帰還します。で、その持ち帰ったサンプルというのが、小惑星の地表を削り取ったものではなくて、なぜか人の骨だったんですよ。それも年代測定してみると何万年も前の人の骨。つまりビッグクエスチョンというのは「地球から遠くはなれた直径8キロほどの小惑星になんで人の骨があるの?」という謎です。いやぁすごい風呂敷の広げ方ですよね。ここまでどでかい謎を出してくる、というだけでこの作品読みはじめると先は読まずにはいられません(^^)

で、その宇宙探査機は日本のJAXAのものなんで、その骨を調査するのは日本国であるはずなんですが、大部分を米国に奪われてしまうんですね。奪うというと物騒ですけど、探査機を作っている段階で米国は技術供与をしていて、その見返りとして持ち帰るサンプルの一定部分をアメリカに貸与する、という条件が初めから決まっていたんですね。

で、いざそんな大それたモノが宇宙から出てきたもんだからJAXAとしてもほっとけない。アメリカの研究結果を知りたい、と思って、裏ルートでアメリカ側の人骨分析情報をハッキングしてくれ、という依頼を主人公たちグループが受けることになるんですね。

で、調査しているうちに、JAXAは依頼は取り消したりして、事態はうやむやになっていきます。だけど、主人公は途中まで首を突っ込んだもんだから、依頼が終了したとしても、その謎「なぜ小惑星に何万年も前の人骨があったのか?」という謎を解こうとする・・・という話です。

で、その解決篇をここで書くわけにはいきませんが、無理はあるけれど確かに合理的な說明がされていて、すごいな〜と思いました。

しかしいちばん驚いたのは、どうやって小惑星に人の骨があったのか?という物理的な謎よりも、なぜ人の骨がそこになければならなかったのか?という謎に対する答えが、冒頭で書いた人類とは何者なのか?どこからやってきて、どこへいこうとしているのか?という謎に対する答えになっていることです。その解決篇を読んで、うわ〜っと唸ってしまいました。ビッグクエスチョンに対する答えはもっとどでかいビッグアンサーでした。ということで、これぞSFミステリという感じの満腹感を感じた一冊。