天然誤読生活

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カラマーゾフのお父さんは億り人だった

今まで読んだ小説の中でいちばん面白かったのは【カラマーゾフの兄弟】です。新潮文庫原卓也訳が特に好きです。

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

 

で、最近試しているシャーペンで書き込みながらの読書で、今カラマーゾフを読んだらどんな感じだろう?と思って原卓也版を再読してみました。

ページ数でいうと57ページくらいまで読みました。やっぱり面白いですね。何が面白いかというとカラマーゾフの兄弟ってなんといってもキャラが立っているんですよ。

で、今朝読んだ第一編のタイトルは「ある家族の歴史 」とあるように、カラマーゾフの人たちのキャラクターをざっくりと紹介する文章となってます。この部分を読むだけでもすでに相当面白い。たぶん古典と言われる文学作品の中でツカミに関してはずば抜けているんじゃないでしょうか。まずは・・・

 父親フョードル。この親父、どんな人かというと金儲けのうまいエロ親父。若いころはほとんど無一文。ところが死んだときには10万ルーブル(今でいうと1億円くらい)の資産を残していたということ。つまりフョードルは億り人だったということですね(^^)

帝政ロシアの通貨事情/ドストエフスキーの世界

彼の億り人ロードのスタートは貴族の令嬢を騙して駆け落ちした結婚から。むこうの家族もしかたないから渋々事後承諾。で、持参金も家屋敷もたっぷりもたせた。金額は2万5千ルーブル、今の感覚でいうとなんと2千5百万円くらい。これをフョードルはさくっと巻き上げる。で、いきなり金持ち。

でも、その狙いがばれて、嫁にはあきれられいつもケンカ。で、いつも殴られ蹴られるのはフョードルのほう。嫁はさすがに愛想をつかして別の若い男と駆け落ちをして都会へ。

フョードルは落ち込むどころか、殴られ蹴られ若い男に嫁を盗まれたという話を、自分から町中でいいふらす。自虐ネタでウケてご満悦。

で、駆け落ちした嫁は病気なのか餓死なのか、死因は不明だけど、すぐに死んでしまう。訃報を聞いたフョードルは喜んでいるのか、悲しんでいるのか、はたまた両方なのかよくわからない反応を示す。

フョードルは酔っ払った状態で妻の死を聞き知った。話によると、彼は往来を走り出し、嬉しのあまり両手を空にかざして、「今こそ去らせてくださいます」と叫び出しそうだが、また別の噂では、幼い子供のようにおいおいと泣きじゃくり、その様子たるや、皆の鼻つまみ者だったにもかかわらず、見るのもいじらしいほどだったともいう。そのどちらも大いにありうることだ。つまり、自分の解放を喜ぶのと、解放してくれた妻を偲んで泣くのとが、いっしょになったのであろう。たいていの場合、人間とは、たとえ悪党でさえも、われわれが一概に結論付けるより、はるかにナイーブで純真なものなのだ。われわれ自身とて同じことである。

で、一応ふたりの間には男の子がひとり生まれている。ドミートリーという元気な男の子。ところが、母親は出て行くし、父親は遊び呆けてばかりいて息子がいることさえ忘れている様子。仕方ないから召使のグレゴリーが面倒をみる。そしてしばらくすると母方の親戚がひきとり育てることになる。ということで、ドミートリーはほとんど父親と家の記憶がないまま家を離れる。

その長男ドミートリーは直情型のやんちゃな若者に育つ。女遊びやギャンブルに夢中になったり決闘をしたり。で、成人してからフョードルという実の父親が生きていることを知る。そしてそれなりに財産をもっていることを知る。その財産はもともと母親のものであり、自分がそれなりにもらってもいいお金だと気づく。ドミートリーは遊び人だからいつも金は足りない。だから、父親に会いにいく。

フョードルはドミートリーが単純で何も考えていないとすぐに見抜く。だから自分の有利なような証文にサインをさせて、その後は少しずつ金をドミートリーに送金する。そのうちドミートリーはまとまった金が必要な事件を起こす。しかたないからフョードルのところにいって、残った金、一括で全部くれ、と頼む。

ところが、フョードルにいわせると、いままで送った金でほとんどドミートリーの持ち分は使い果たしたという。あてがはずれたドミートリーは逆上する。そして親子は大喧嘩。ふたりのあいだには一触即発の危ない雰囲気が生まれる。

フョードルはドミートリーの母の死後に別の女性と結婚をしている。その後妻も若くして亡くなるがふたりの男の子を生んだ。イワンとアリョーシャである。この次男と三男もフョードルは育児放棄。なのでまたもや母方の親戚に引き取られることになる。

イワンはちょっと気難しい秀才肌の若者に育つ。一応学生生活を自活するだけの金額は母方の親戚から贈与されているが、それには手をつけず、大学生時代から新聞のコラムを書いて自活する。その舌鋒鋭く、またユーモラスなコラムはかなり評判がよい。世間的には若き社会評論家みたいな位置づけ。今の時代でいうとブログを書いて評判になって、テレビに出たりする若手社会学者って感じでしょうか。

で、そのイワンもドミートリーとフョードルが危ない関係になっているその頃、フョードルのもとを訪れる。このふたりも水と油のような関係なので、争いが起こるかと思いきや、なぜか馬があうのか、ふたりは仲の良い親子になる。まぁイワンが親父の乱痴気騒ぎに付き合うというのではないんですが・・・。

おそらく、フョードルはビジネス面つまり金儲けに関してイワンが頼りになると感じたからでしょうか。一方イワンがどんなことを考えて、エロ親父と仲良くしているのは誰にもわからないところ。

そして三男のアリョーシャ。この末っ子は誰からも好かれる気の良い若者。だけど気の弱いところもありいじられキャラというところ。彼を知る人物によれば「アリョーシャは世界のどこに行っても生きられるだろう。誰だって彼を知れば助けたくなる」そんなふうに言われるほどほっとけない魅力のある人間。 

彼は人々を愛していた。人間をすっかり信じきって、終生を暮らしているように見える彼だったが、それにもかかわらず、一度としてだれ一人、彼をお人よしと見なすものも、単純な人間と見なすものもいなかった。自分は人々の裁判官にはなりたくない、人の批判なぞするのはいやだし、どんんなことがあっても批判したりしない、と告げ、感じ取らせるような何かが彼にはあった。終始つらい悲しみを味わっていながら、いささかも批判せず、すべてを許しているようにさえ思われた。

で、アリョーシャもフョードルの家に帰ってくる。時期的にはイワンよりも一年ほど前から滞在している。で、アリョーシャは真面目な若者だから、フョードルは最初警戒する。好き放題遊び呆けている自分を非難するのではないかと。

ところが、フョードルが家で乱痴気騒ぎをしていてもアリョーシャが非難することはない。ただその場を離れるだけ。そして翌朝、何事もなかったように父親として自分を尊敬をもった態度で遇してくれる。そんなことが重なってフョードルはアリョーシャに対して心を許す。家族を愛するということさえはじめて知る

そんなときにアリョーシャは近くの修道院に出家したい、と言い出す。フョードルは寂しくなるが行って来いと送り出す。そして地獄について語りだす。アリョーシャは出家したいといいながら、スピリチャルな人間ではなくてけっこうリアリスト。地獄なんてない、と言う。それに対して、フョードルは「自分のような人間がいくような地獄が存在しないとするのなら、この世界に真実なんてねぇなぁ」なんていう理屈を語りだす。

アリョーシャはそんな父親の自虐ネタをただニコニコと聞いている。

というような感じでカラマーゾフの父親と兄弟について軽く紹介するという出だしです。どうですか?それぞれキャラが立ってませんか?

カラマーゾフを解説しているこのサイトで、三兄弟をあの有名キャラクターたちになぞらえていて面白いと思いました。

matome.naver.jp

ジャイアン=ドミートリー

スネ夫=イワン

のび太=アリョーシャ

ということです。なるほど〜、というところと、そうかな~?というのが半々の例えですね。で、するとフョードルはドラえもん?悪いドラえもんか?なんて考えるとちょっと笑えますが無理がありますね(^^)

ということでついつい読んだ部分をつらつらと書いてしまいました。話はここから徐々に盛り上がってくるんですよね〜。また、読みます。本当に面白い小説です。