天然誤読生活

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【書評】数をかぞえるクマ、サーフィンするヤギ

 

数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ―動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語

数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ―動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語

 

カバー写真のクマのこんにちは!って感じが、そのまま本の中身を現している楽しい一冊。写真も多いし、子供に読ませると喜ぶだろうな。いやいや、大人のほうが楽しんじゃうかも?この本、難しい話はいっさいないです。だけど、薄っぺらな雑学本みたいな雰囲気でもないです。最初から最後まで、へぇ~と驚くばかりの動物の感情と知性に関する話が続きます。短いエピソードがたくさん書いてあるので、眠る前に少しずつ読み進めたりするのもいいかも。筆者の経歴をざっと見てみると動物学者とかではないみたい。動物が好きなライター、という感じ。著者自身が仕事の研究対象として動物を見ているんじゃなくて、面白い友達と思ってる、たくさんの動物のことを、書かずにはいられなかった、という雰囲気が文章から伝わってきます。どんな話かといいますと・・・。

 例えば鶴の恩返しという昔話があるけれど、シアトルのカラスも恩返しするらしく、エサをくれた女の子のお母さんが失くしたカメラのレンズの蓋を見つけて届けてくれたらしい。そして贈り物というよりも貢物をするヒョウアザラシもいる。人間のダイバーに一目惚れしたヒョウアザラシは手を変え品を変え自分が大好きなものを貢いだ。それはペンギンf^_^;)だけど残念ながら想いは届かなかった。彼女は恨めしそうな顔でダイバーを見つめていたそうです。

それからプレーリードックは名詞、形容詞、動詞、副詞を組み合わせた言葉(鳴き声)を操り、天敵から身を守るために独自の緊急警報システムを作り上げた。そのシステムを使って、住処である地下帝国の安全を維持している。その緊急警報システムを、アナホリフクロウがこっそりと盗聴していて、我が身の安全に役立てているというのも面白い。

そして動物たちも笑うこととか遊ぶことが大好き。ゴリラは手話をおぼえてギャグをかますらしい。それから傷ついて保護されている犬に他の犬の笑い声を録音して聞かせると落ち着くということ。身体を動かす遊びももちろん大好きで、カリフォルニアのピズモというヤギは天性のバランス感覚を活かして、得意な顔をしてサーフィンを楽しむ。

だけど遊んでばかりということでもなくて、働く時は働く。ブラジルではイルカと人間が絶妙なチームワークで漁をする。それに仕事といえばやはり報酬は気になるけど、猿も人間と同様、格差社会には納得いかないようで、同一労働同一賃金を要求するという。そしていちばんの働き者といえばアリだろうか。そのアリの農耕の歴史は人間より長い5000万年。中にはカーボーイのように小さな虫を牧畜して安定的な食料を確保しているアリもいるらしい。

芸術分野においても素晴らしいセンスをもつ動物がいる。ザトウクジラは2時間半におよぶ新しい歌を毎年作曲して全員で唄うらしい。それは韻を踏んでいるということ。唄うクジラだ。そしてチンパンジーのオーティスは鏡の前に懐中電灯を持ってきて口を広げて、自分の喉の奥を観察していたらしい。やはり自分がなにものなのか気になるのだろうか?

その昔動物たちを神としてあがめる社会はたくさんあった。だけど今はほとんどない。人間は自分がいちばん偉いと思ってる。だけど、それはたぶん人間の奢りというか、ただの勘違いなんだろうな、なんてこの本を読んで思いました。そしてそんな勘違い野郎であるわれわれ人間にオトナの態度で接してくれる動物たちには学ぶところがたくさんあるようです。

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