天然誤読生活

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映画とは道徳とか正義を娯楽化したものだと考えると映画の別の顔が見えてくる【ストーリーの解剖学】

 

ストーリーの解剖学ーハリウット?No.1スクリプトドクターの脚本講座

ストーリーの解剖学ーハリウット?No.1スクリプトドクターの脚本講座

  • 作者: シ?ョン・トゥルーヒ?ー,John Truby,吉田俊太郎
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 脚本が素晴らしいと言われている映画、例えばゴッドファーザートッツィーとかLAコンフィデンシャルなどを題材にストーリーの作り方を学ぶ、という本です。内容はものすごく濃くて、おそらく、映画学校みたいなところで、半年とか1年くらいかけて学ぶくらいのレベルなのではないかと、思います。ストーリー作りにおいてよく言われるヒーローズジャーニーとか三幕構成に対しては少し批判的で、著者が考案したという22のストーリー構造という考え方をもとに、ストーリーを作り上げよう、という本になります。その22の構造とは以下のものです。

 


* 1 自己発見、欠陥、欲求
* 2 亡霊とストーリーワールド
* 3 弱点と欠陥
* 4 誘引の出来事
* 5 欲求
* 6 仲間
* 7 ライバルまたは謎
* 8 仲間のふりをしたライバル
* 9 最初の真実の発見と決断
* 10 プラン
* 11ライバルのプランとメインの反撃
* 12 駆動
* 13 仲間による攻撃
* 14 擬似的敗北
* 15 第二の真実の発見と決断
* 16 観客による真実の発見
* 17 第三の真実の発見と決断
* 18 門、ガントレット、死の国への訪問
* 19 決戦
* 20 自己発見
* 21 道徳的決断
* 22 新たなバランス状態

 

確かにこの構造をもとに考えると、面白いストーリーというものの秘密がわかるかも、とも思わせます。道徳的決断という項目が入っているのが、印象的です。で、道徳論議をベースに考えて5つのストーリーのパターンというのも面白い。

* ①善対悪
* 主人公は心理的な欠点を持っているが、基本的には善人である
* ライバルには道徳的な欠陥がある、時には邪悪な存在(生来的に非道)ですらある
* マトリックス、シティ・スリッカーズ、フィールドオブドリームス、クロコダイル・ダンディ、ダンス・ウィズ・ウルブズスター・ウォーズ、逃亡者、シェーン、オズの魔法使い


* ②悲劇
* 悲劇の場合、最終地点にひねりが加えられる。書き手は、冒頭で主人公に致命的な性格上の欠陥を与え、終わり間近になった段階で、あまりにも遅すぎた自己発見をさせる。
* ハムレットリア王、オセロ、7人のサムライ、戦場にかける橋、ニクソンエイジ・オブ・イノセンス嵐が丘、めまい、アマデウスアメリカン・ビューティー市民ケーン


* ③ペーソス
* 悲劇の主人公を一般人に置き換え、忍耐、失敗、破滅の運命にある人物の美しさを見せることで、観客にアピールする道徳論議だ。主人公は手遅れの自己発見すらしない。主人公は有能なわけではない、しかし、最後まであきらめることなく戦い続ける
* ドンキホーテ欲望という名の電車、生きる、セールスマンの死フォーリング・ダウン、M、蝶々夫人桜の園狼たちの午後ニュー・シネマ・パラダイス


* ④風刺とアイロニー
* 風刺は、信念、それも特に社会全体が掲げている信念をコメディー化したもの
* アイロニーは登場人物が自ら欲しているものを得るために行動しているにもかかわらず、それとは正反対のものを得てしまうというもの。
* 高慢と偏見、エマ、アメリカン・ビューティーボヴァリー夫人桜の園、卒業、マッシュ、トム・ジョーンズ、ザ・プレイヤー、マルコビッチの穴、王子と乞食(大逆転)ミスターレディミスターマダム、プライベート・ベンジャミン、狼たちの午後、シャンプー、ロストイン・アメリカ


* ⑤ブラック・コメディ
* 人が破滅するのは、悲劇のような、個人選択によるのではなく、根本的に破滅的な社会体系から出られなくなってしまったせいだということ。カギは主人公に自己発見させないこと。そうすることで、観客にこのテーマをより強烈に伝えることができるからだ。

 悲劇とかペーソスってなんか魅力を感じてしまいますがなんでなんでしょうね。

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2017/12/22