エンターテイメント性がより強くなった大人気ミステリシリーズの第4弾
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 19-1)
- 作者: ダヴィドラーゲルクランツ,ヘレンハルメ美穂,羽根由
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/09/05
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
前から読みたいと思っていたミレニアムシリーズのpart4をようやく読みました。ミレニアム1〜3はここ10年くらいの間では、いちばん面白いミステリシリーズだったと思います。スティーグ・ラーソンという方が筆者で、part10くらいまで続ける構想だったらしいですが、惜しくもpart3を書き上げたところで、ラーソンさんは亡くなってしまったんですね。
で、今回のpart4というのはダヴィド・ラーゲルクランツという全く別のかたが書いています。ところが、まったく違和感のない続きものとして楽しめます。あえて違いを指摘するとなら、よりエンターテイメント性が強くなっているというところでしょうか。
で、その、より強くなったエンターテイメント性をどこから感じるかというと、ふたつあります。一つ目は、今の時代に一番話題になりやすい事象を、ストーリーの中にうまく取り込んでいるということですね。
具体的には、人工知能によるシンギュラリティの問題、サイバー空間の中での国家単位での争い、そしてサヴァン症候群といったあたりがモチーフとして使われていて、自然にストーリーの中に取り入れられています。どれをとっても、たくさんの人が興味を持っている事柄だと思いますので、その点でも売れるなぁと思います。
それからもうひとつの点は勧善懲悪的な展開がより強くなっていますね。主人公側への共感と、敵側がやっつけられる時のカタルシス効果が大きく感じられます。主人公のリスペットはぶっ飛んでいるキャラクターで、現実に近くにいたら、どうみても近寄りたくはない感じですが、今作では彼女の過去がかなり掘り下げられていて、その点でも、応援したくなるヒロインとしてより存在感を増している。それもあって、勧善懲悪的な部分が強くなってるんですね。
そういう意味では、このミレニアムシリーズ、ドギツいシーンも多々あるんですが、最終的には水戸黄門的な安心感を得られる作風でもありますね。まぁ、今後続いていくとして、その予定調和的な部分があまりにも強くなりすぎても困りますが・・・。
さて、このシリーズ、すでに読まれている方も多いかとは思いますが、もしまだ未読でしたら、シリーズ第1作ドラゴン・タトゥーの女から、じっくり時間をかけて読んでみて下さい。面白さはやっぱり一級品です。
2017/11/05