天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

運のいい人になりたいので長要約してみた

 

 【運のいい人の法則  リチャード・ワイズマン博士 (著), 矢羽野 薫 (翻訳)】

はじめに

【運が良い人の定義】

特別に努力をしたわけでも、驚くべき才能があるわけでもないのに、理想のパートナーと出会い、生涯の夢を実現させ、仕事もうまくいき、幸せで意義のある人生を送る人を運が良い人と定義している。

【この本の目的と概要】

自分の運を理解して、コントロールし、チャンスを増やす方法を解明すること。
そのための方法として著者は数百人の際立って運がいい人と運が悪い人を対象にインタビューと実験をした。その結果解ったことは、人は生れつき運がいいわけではない。4つの法則に従って運を作り出しているという。その4つの法則を実践すれば、より多くの幸運を経験できるという。

 
<第一章>

この短い第1章では有名人の幸運に対するエピソードが紹介されている。面白いなあと思ったのはメル・ギブソンの話だ。1979年に映画監督のジョージ・ミラーは「マッド・マックス」の主役を探していた。戦いに疲れて傷ついた、しかしタフな男が理想だった。オーディション前日の夜、メル・ギブソンという無名な俳優が、3人の酔っぱらいに襲われた。顔を腫らし、疲れきった様子でオーディションに現れたギブソンを見て、ミラーは彼を主役に決めた。

もしもメル・ギブソンがオーディション前夜、酔っぱらいに襲われるという「不運」を経験しなかったらその後の彼の大成功という「幸運」はやってきただろうか?

著者がアンケート調査をしたところ、多くの人たちが、自分はいつも運がいい、または運が悪いと偏った考え方をしているということがわかった。50%の人が自分はいつも運がいいと答え、14%の人が自分はいつも運が悪いと答えたという。つまり回答者の64%が運に関してどちらかに偏った考え方をしているということだ。これはイギリスで行われた調査だ。日本で行ったらどうだろうか?もしかしたら良いと悪いが逆転するのかもしれないがどちらかに偏る割合はそうは変わらないような気がする。(個人的見解)


<第2章>

【運のいい人と悪い人の人生の4つの違い】


①運のいい人は、偶然のチャンスに巡りあう。一方運の悪い人はそのような経験がめったにない。
②運のいい人は自分でも気づかぬうちに正しい選択をしている。一方悪い人の選択は失敗に終わる。
③運のいい人の夢や目標は、不思議なくらいに実現する。一方運の悪い人の夢や目標ははかない空想とかわらない。
④運のいい人は不運も幸運に変える力がある。一方運の悪い人は不運を幸運に変える力がない。

著者はこれだけはっきりした違いに驚き、運のいい人には運を良くするための心理的なテクニックがあるのだろうか?と考え詳しく研究してみることにした。

・疑問
例えば宝くじによく当選するという運のいい人がいるが彼らは当選番号を予想する能力を持っているのだろうか?

・実験
1000人を対象に宝くじの当選番号を予想してもらった。事前アンケートとして自分が運がいいか?悪いか?という質問にも答えてもらった。
↓ 
・結果
運がいいと思っている人と悪いと思っている人のあいだに予想的中率に差はなかった。つまり幸運は予知能力のおかげではないことがわかった。同様に知能と幸運の関連性
つまり頭が良いと運が良くなるのか?ということも著者は調べてみたが、これも関連性はなかった。

結論
☆予知能力、知能といった能力的なものと幸運度に直接の関連はない。

次章への予告
宝くじの調査の際、運がいいか悪いかという質問以外に当選する自信があるか?なか?という質問も加えられていた。その結果、運がいいと思っている人は自分が当選するという自信をもっていた、一方運が悪いと思っている人は当選するとは思っていない傾向がはっきりと現れた。

宝くじの当選結果に、自信や思いこみが影響することはない。しかし、現実生活の出来事に対してはどうだろうか?自信があるか?ないか?これはいろんな場面で大きく影響するのは当然だろう。つまり自信が結果を変える。

それから数年間、著者は運のいい人と悪い人の考え方と行動の違いを分析した。その結果4つの法則性が見つかった。第3章からその法則を個別に検証していく。

<第3章>

法則1チャンスを最大限に広げる

【運のマジックとは「性格」だった】
懸賞によく当たる人は実はたくさん応募もしている。良い出会いが多い人は人とたくさん出会える場所へいつもでかけている。つまりよく当たるように、良い出会いが多くなるように行動しているわけだ。その行動とはどこからくるのか?それは個人の性格からだ。ということは運がよくなる性格があるということだ。著者は心理学で用いられる5つの性格の特性を使って運のいい人と悪い人の違いを検証する。

*5つの特性
①協調性②誠実さ③外向性④神経症的傾向⑤開放性

著者の調査によれば①協調性②誠実さは運のいい悪いに関連性は薄いという。大きな影響を及ぼすのは③外向性④神経症的傾向⑤開放性の3つの性格特性となる。
個別に見ていこう。

③外向性
運は人が運んできてくれるというが、たくさんの人に会えば、それだけ人生にプラスの影響を与えてくれる人に出会えるチャンスも増える。そして相手から近寄ってもらう雰囲気を作ることも大事だ。それは対面しているときの非言語的なコミュニケーション。
つまり笑顔や身振りが大切になる。あなたの態度は「開いているか?」「閉じているか?」

神経症的傾向
運のいい人は肩の力を抜いて生きている。面白い実験が書いてある。

実験内容
被験者に新聞を1部ずつ配布、掲載されている写真の枚数を数えてもらう。ほとんどの人は2分ほどで最後まで目を通し、写真を数え終わった。中には神経症的に2回調べた人もいたという。しかし本当は全員が数秒で答えられたはずなのだ。新聞の2ページ目にこんな広告があったからだ。「ここで数えるのをやめて下さい、答えは43枚です。」
しかし写真を数えるのに夢中で、誰もその広告に気が付かなかった。さらにもっと大切なものも目に入っていなかった。真ん中あたりにはこんなメッセージもあった。
「数えるのはやめて下さい。このメッセージを読んだと申告すれば100ポンド差し上げます。」これも誰も気が付かなかった。

この実験は何を表しているだろうか?何かにあまりに真剣になりすぎて、大きなチャンスを見逃しているということではないのか?

例えば素晴らしいアイデアを発見する起業家やクリエーターがそうではない一般の人たちと違うものを見ているのだろうか?おそらく違うだろう。

著者のアンケートによれば神経症的傾向のテストでは、運のいい人は悪い人よりもはるかに点数が低い。それに対し、運の悪い人は緊張や不安に弱い傾向がある。幸運に気がつく注意力、それは肩の力を抜いた状態でこそ発揮できる能力なのかもしれない。

よくコインを拾うというリチャードの言葉が興味深い。

 

「気分が沈んでいる日や、余計なことを考えている暇はないと思っている日は、たいていお金を拾わない。でも、心が軽い日はお金を拾いやすい。そんな時は感覚が鋭くなり、意識がはっきりしているからだ。不思議なものだね。拾おうと思って歩いているわけではないのに、とくに何かを気にしていないときのほうが、見つける確率ははるかに高いみたいだ。」

 

⑤開放性
運のいい人は新しい経験を喜んで受け入れるそうだ。開放性の高い人はさまざまな場面で新しい経験をしたいと思っている、一方開放性の低い人は、しきたりに縛られやすい。昨日と同じ今日、明日が来ることに安心を覚える。著者のアンケートによれば、運のいい人は開放性が高く運が悪い人は開放性が低い。

りんご園の例え話が面白い。あなたは広いりんご園の真ん中に住んでいるとする。毎日、リンゴを集めなければならない。最初はどこに行ってもリンゴはたくさん集められる。ところが数日たつと同じ場所へいってももうリンゴはない。だから、まだ行ったことのない場所へいかなければリンゴはとれない。

運もそれと同じだという。偶然のチャンスはすぐに底を突く。まだ行ったことのない場所で、会ったことのない人と会うことによって幸運という果実を手にすることができるのだ。
2016/09/12

<第4章> 

虫の知らせを聞き逃さない 


著者のアンケートと分析によれば運のいい人は直感を信じている割合が高いそうだ。直感の理由はうまく説明できない。しかし運のいい人の直感はよい結果を生む場合が多い。

表面的な意識できる判断は、見たいものだけを見て聞きたいものだけを聞いている事も多い。しかし意識できない潜在意識ではもっと多くの感覚を使って、多くの情報を見て判断しているのかもしれない。

それはいわゆる虫の知らせともいわれる。肌で感じゾクッとする感覚やワクワクする気持ちとして現れる。言語化するのは難しい感覚。

例えば初めて会った人に対する印象。なんとなく感じのよい人、なんとなくうさんくさい人。見た目や肩書きだけでは判断できない感覚。何かおかしいと信号が送られてくることがある。後々その印象が当たっていたということは多い。

運のいい人の直感や本能は正確で信頼できる。しかし本人は運が良かっただけだと思っている。だが実際は無意識のうちに直感を働かせている。

運の悪い人は直感を信頼せずに、意識できる本人が知っている範囲のみで判断することが多いようだ。もっと無意識からのメッセージを受けとることを意識するべきだろう。

運を良くるためにはじめにするべき事はもしかしたら謙虚に無意識や潜在意識の言葉に
耳を傾ける事なのかもしれない。その直感を高める方法として本書では瞑想が有効だされている。体験者の言葉が印象的だったので引用しておきます。

 

ジョナサン
1日2回、20分ずつ瞑想している。教義や宗教ではなく、心の中の自分と話をする手段だ。エネルギーや集中力、生理機能など、あらゆる面で力が引き出される。私にとって大きな収穫は、直感と幸運のレベルが上がった事だ。

ミルトン


問題は直感に耳を傾けようとしない事だ。直感が語りかけるというのは、一匹のチョウチョウが心の中を横切るようなもの。そのときは真剣に考えずに、実際に悪い事が起こってから、どうして気がつかなかったんだろうと後悔する。チョウチョウが飛んでいたら、捕まえなければいけないんだ。僕は普段から瞑想をしている。瞑想は役立つよ。想像力が解放され、普段ならできそうにないことをやる。体の力が抜けて、気分も楽になるしね。他人に対する感覚ご高まり、直感がよりはたらいて、運も良くなるんだ。

 

 

最後に本書で引用されていた印象に残る言葉について。

『自分の運を信じている人は誰よりも幸運だ。ドイツのことわざ』
もしかした運を信じるというのは自分の無意識からの声を信じるということかもしれない。それが幸運を呼び寄せるのだろう。

2016/09/14

<第5章>

幸運を期待する

著者の調査によれば将来いいことが起こると思う「プラスの期待度」は運のいい人のほうが運の悪いひとよりはるかに高かったそうだ。逆に将来悪いことが起こるのではないかという「マイナスの期待度」では運の悪い人が運のいいひとよりも高いという結果がでた。

運のいい人と悪い人では、将来に対する見方が根本的に違うらしい。もう少し細かく見てみよう。運のいい人は、自分ではコントロールできないものごとがいつでも自分にとっていい結果をもたらすと思っている。運の悪い人は、予想がつかない出来事はすべて自分にとって悪い結果をもたらすと思っている。

もうひとつ不思議な傾向も発見された。運のいい人は不運は長続きせずすぐ終わると思っている。運の悪いひとは幸福な出来事はすぐ終わると思っている。この傾向は著者の調査ではっきり裏付けられたという。

この傾向はどんな結果を生むだろうか?「自己充足的予言」という言葉がある。このようになるのではないか?といった予想が、無意識のうちに予想に適合した行動に人向かわせ結果的に予言された状況をつくってしまうということですね。

つまり良い予言をすればいつの間にか良い未来を実現するように行動するし、
悪い未来を予想すればいつの間にか悪くなるように無意識に行動してしまうんでうすね。これが運における「自己充足予言」ですね。

だから明るい未来を予想する運の良い人は期待が最大の効果を発揮するし運の悪い人に共通する「悪いことが起こりそうな予感」は望み通りの人生を邪魔する要因になるということです。考えてみると怖いですね。

といっても頭の中で考えてばかりいるとどうしてもネガティブになりがちという人も
多いかもしれませんね。自分もたまにそんな悪いループにはまることがあります。そんな時はやはり言語化、実際文字に書きだして視える化することが有効なのではないでしょうか?

この章のおわりに役立ちそうなノートの書き方がありましたのでシェアいたします。

 

☆著者が提案する運を鍛えるレッスン

ノートの新しいページを開き、目標を書く。中央に線を引いて半分に分け、それぞれ「効果」「コスト」と見出しをつける。目標が叶うとして達成したらどのようなことが起こるか箇条書きにする。様々な可能性を考えてみよう。
次に、目標を達成するまでに努力しなければならないことや我慢しなければならないことを「コスト」の蘭に書く。最後に2つのリストを合わせてみる。効果とコストを比較する。コストよる効果に価値があるとわかれば
行動にはずみもでるだろう。

 

2016/09/15

<第6章>

 不運を幸福に変える

『幸運とみるか不運とみるかは、自分が決めること。』

この章で印象的なのは著者がおまじないやオカルト的な考え方に否定的だということだ。これは運のいい人と悪い人の調査結果からそのような意見をもったわけではなく、元々そのような似非宗教やエビデンスのない情報を信じない傾向のようだ。

僕がこの本を良いなと思うのはそういうところだ。どうにも開運グッズなどというものを見ると開運するのはグッズを販売する人たちだけだろうと思ってしまう(笑)

さてこの章では運を良くする4つ目の法則として運のいい人は不運を幸運に変えることができるとしています。具体的には更に4つの項目に細分化されています。

1 運のいい人は不運のプラス面を見ている。
2 運のいい人は、不運な出来事も長い目でみれば最高の結果になると信じている。
3 運のいい人は、不運にこだわらない。
4 運のいい人は、積極的に行動して将来の不運をさける。

ポイントは目の前の不運な出来事を気にしない、いや、気にしないどころか、その不運の美味しいところを見つけて、パクリと食べて栄養分にしちゃおうという感じでしょうか。それを意識的にか、無意識になのかはわかりませんが、運のいい人はそのように実践しているということなのですね。恐るべしです、運のいい人(笑)

ただ冷静に考えると、未来がどうなるのか?これは誰にも絶対わからないわけですね。
未来に個人の力ではどうしようもない何かがどのように起こるのか?これはわからないわけです。

いい未来がくるとも限らないんだけどそれが来ないとも言い切れない。ということは不運が訪れても落ち込まないようにして、次にやって来る幸運をいかにキャッチするか?これは落ち込んでいては見逃しちゃいますもんね。
ということは不運のなかにチャンスを見つけるという姿勢は、もしも生来の性質ではなくともぜひ実行したい態度なのかもしれません。それこそおまじないやオカルト的なものに頼ることとは正反対の姿勢だなあと思います。その手法を広めようとする考えのワインズマン博士を支持したいですね。

事例としてエミリーという女性が不運と戦った経験が紹介されていました。彼女の言葉が印象的だったので一部抜粋します。

 

私にとって最も素晴らしい経験のいくつかは、最悪の経験から生まれた。
運がいい、悪いと言うけれど、わたしにとって運は運でしかない。それを
幸運と見るか不運と見るかは、自分が決めること。

運について語るこの本でこの言葉をとりあげているのは大変興味深いところです。

2016/09/17

第7章と8章はまとめになるので、僕が最も印象に残った著者の言葉と4つの法則のまとめを書き写してこの本のレビューを終わりにします。

 

「運は魔法の力でも、神様からの贈り物でもない。そうではなく、心の持ちようなのだ。どのように考え、どのように振る舞うかなのだ。私たちは運のいい人、運の悪い人として生まれてくるわけではない。幸運や不運の大半は、自分の考えや行動によってつくりだすことができる。」

「ほとんどの迷信は、運とは不思議な力で、魔術や超常現象でしかコントロールできないと思われていた時代に生まれた。しかし私は現代に行った実験と研究から、運を鍛える4つの法則を導き出した。幸運のお守りをポケットから出して、あなた自信の心のなかに、自分で幸運のお守りをつくろうではないか。」

 

☆運を鍛える4つの法則

法則1 チャンスを最大限に広げる
①運のいい人は「運のネットワーク」を築き、それを広げている。
②運のいい人は、肩の力を抜いて生きている。
③運のいい人は、新しい経験を喜んで生きている。

法則2 虫の知らせを聞き逃さない
①運のいい人は、直感と本能に耳を傾ける
②運のいい人は、直感を高める方法を知っている

法則3 幸運を期待する
①運のいい人は、幸運が将来も続くと期待している。
②運のいい人は、たとえ可能性がわずかでも目標を達成するために
努力して、失敗してもあきらめない。
③運のいい人は、対人関係がうまくいくと思っている。

法則4 不運を幸運に変える
①運のいい人は、不運のプラス面を見ている。
②運のいい人は、不運な出来事も、長い目でみれば最高の結果に
なると信じている。

 

2016/09/20