天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

こんなに頑張ってるのに給料が安すぎる理由

 

(文庫)カイジ「命より重い! 」お金の話 (サンマーク文庫)

(文庫)カイジ「命より重い! 」お金の話 (サンマーク文庫)

 

会社勤めをしてますと、こんなに頑張ってるのにどうして こんなに給料が安いのか?と、ため息をついたことがない人は、ほとんどかいないかと思います。この本ではその秘密がわかりやすく說明されています。目からウロコがボロボロの解説です。どういうことかといいますと・・・。

 まず給料の支払い方に関してなのですが外資系企業などが「利益分前方式」であるのに対し日本企業のほとんどは「必要経費方式」であるということです。必要経費方式というのは「従業員が明日も会社にちゃんと出勤してくれて普通に働いてくれるのに必要な最低限なお金を払いますよ」ということです。

ちゃんと働くにはご飯たべなくちゃいけないし住むことろも必要だし家族も養わなくちゃならない。そして多少の楽しみもなくちゃいけないからその分もプラスします。ついでに仕事の責任が重くなればストレス発散も余計に必要になるからその分遊ぶお金も余計に払いますよ。だから平社員より部長の給料は多いですよー。だから明日もちゃんと出勤してねーその分は払うからねー。ということはもともと会社の利益の増減とあなた達の給料の額はダイレクトには関連しませんよーということです。つまり「小作農と同じです」ということになるのですね。今年豊作だからってたくさんはお金(お米)あげないよということですね。だってこの土地は地主である僕らのものだから・・・ということですね。

この本の著者の小暮さんは「金持ち父さん貧乏父さん」と「マルクス経済学」の2つの共通点に気づき本格的に経済を研究したそうです。

 

【経済を知ることでより良い生き方を選択できるようにする】p21


個人が選ぶことを可能にするための手段としての経済学ですね。冒頭にドストエフスキーの言葉が引用されています。

 

【お金とは鋳造された自由なのだ】

この本を貫く価値観はこの一言に集約されているようです。

 

【「お金を持っていても幸せになれるとは限らない・・中略・・しかし同時に「お金をもっていれば、身に振りかかる”不幸”をある程度回避でる」というのも事実です。そしてお金を持っていれば”自由”を買えるのです。】p34

ぶっちゃけ言ってしまうとお金がなきゃやりたくない仕事もしなければならないし
下げたくもない頭も下げなくちゃいけないということですね。これぞ行動を選ぶことが出来ない「不自由」ですね。だからある程度の「自由」を維持するためにお金についてちゃんと考えましょうという事です。

 

【この時代に必要なのは「稼ぐ」「貯める」「使う」「守る」というお金に関する4つの知識】p28

 

さて、この本の素材に使われている「カイジ」という漫画を読まれたことはこざいますでしょうか?この漫画をざっくりと説明しますと経済的に極度に”不自由”(借金苦)に陥ってしまった「カイジ」という男があの手この手で”自由”(借金返済)を獲得できるかできないかという物語です。

そしてこのカイジは「攻め」の天才であり一晩で10億もの金をギャンブルで稼ぐ能力を持っています。ところが「守り」に関してはからきしの赤子状態であり稼いだ金は手元にとどまることはことはなくいつのまにかまた経済的に極度な「不自由」の状態に戻ってしまうのです。ボクサーでいえばノーガード状態のハードパンチャーですね(笑)当たればデカイが殴られっぱなし。

 

しかしこの状態を手放しで笑えるわけではないと思うのです。例えば本屋さんに行ってマネー本のコーナーを眺めてみると「こんな風に株を買えば儲かりますよ」「一年間で100万円貯める方法」などなど景気のよくなるタイトルが並んでいます。言ってみれば「攻め」ですね。

ところが「守り」の方はどうか?どうすればお金の落とし穴にはまらないかという本は少ない。(いわゆる証券会社などを敵に回しかねない)攻めの知識ばかり高まり守りの意識が薄いとどうなるか?という姿を極端に誇張した姿が「カイジ」なわけですね。だから著者はこの本の題材として「カイジ」を持ってきたのではないかと思うのです。

 では「守る」には何が必要か?それは冒頭の給料の支払われ方の本当の姿を知ることであり借金の仕組みを知ることでありまたなぜ借金をしてまでお金を必要としてしまうのか?なぜ我々は詐欺師に騙され続けるのか?という人間の心理を知ることが必要になるわけですね。

はっきりいってこの本を読んでいて幸せな気分になれるということはありません。だけど見たくなくとも見なければならないことですね。特に私のように脳みそ「お花畑」系の人間(笑)には必読です。うーん20年前にこの本読んでれば(笑)

 

ただこの本暗ーい話だけではありません。最終章で著者が提案するのは

 

【仮に将来に不安があるとしたら、それを解消するために若いときから貯めるべきものは”お金”ではなく”働きつづけられる能力”です。】

 


という言葉も書いてあります。それは食いっぱぐれのないスキルを身につけるということではないそうです。なぜならそのスキルが10年後必要とされるかわからないから。
大事なのはむしろ精神面、つまり・・・

 

【生き残り、経済的な不安を解消できる人材とは”変化を怖がらない人材”です】p234

 

つまりい変化を怖がらないということでしょうかね。「お金に困らなくなる道」が見つけたものですね。
2015/07/17