天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

最近ど忘れが気になるという方へ記憶の7つのエラーという分類法を紹介します。

 

なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎

なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎

 

 先日変わったガムを発見しました。
【記憶力を維持するガム】

https://www.lotte.co.jp/products/brand/kiokuryoku-hanitsukinikui/
また新聞にも物忘れ防止をうたうサプリのようなものの広告が多いです。
効果の方はわかりませんが「記憶」に関して世間の関心と需要があるということは間違いないんでしょうね。私自身も最近「あららら?」というど忘れが多いです。

 

でもこの物忘れの原因って考えてみると「憶えらない」と「思い出せない」にわけることができますよね。そのように記憶に関するエラーを7つに分類したのがこの本の内容です。記憶を維持するガムほど物忘れに対して即効性はないかもしれませんが(笑)記憶力に関して何かしら悩みがあるとすれば有効な本かもしれません。ということで以下に著者の分類による「記憶の7つのエラー」を箇条書き的にまとめます。

 

①物忘れ
物忘れとは時間の経過にしたがって記憶が弱まったり失われてしまうこと。対策としては「精緻化」という方法があります。例えば俳優はセリフを憶える際に、言葉を憶えるだけではなくて、その役がどんな性格でどんな背景を持っているからそのセリフが発せられる、ということまで情報を掘り下げて憶えるという方法。考え方自体は俳優でなくとも使えそうですね。また物忘れ自体は実は脳の大切な機能です。忘れるから新しい情報が入ってくる余地が出来るんですね。最近使っていない情報は今後も使う可能性は低いだろう、という脳自体の記憶整理のシステムにのっとったものでもあります。

 

②不注意
メガネをどこに置いたのか忘れて困ってしまうような状況。あります、これ。車の鍵とか。これはメガネを置いたときに別の事をしていて、または考えていてどこに置いたのかという情報をちゃんとインプットしていなかったことによるエラー。「記憶のしそこない」ともいえますね。ちなみに本書では全米記憶チャンピオンが日常のこまごまとした事をいちいちメモにとらないと忘れてしまう、という笑えるケースも紹介しています。対策としてはやはりメモ帳であるとか、笛吹きケトル、指にひもを結わえる、などがありますね。

 

③妨害
間違いなく知っているはずの情報なのに何かに邪魔されて思い出せない。これは特に人名のど忘れが多いですね。だけどその人の職業などは憶えていたりするから不思議。これは名前と職業では思い出す、または憶える際にくっついてくる情報の量が違うからだそうです。「さとういちろう」という名前自体にはそのままのただの人名というイメージしかありませんが政治家という職業名はいろんなイメージがふくらんで憶えやすい、また思い出しやすいということなんですね。
とっかかりとなるフックみたいなものが多いということです。例えばジュリアロバーツやリチャードギアという名前はハリソンフォード、ショーンコネリーよりど忘れしやすい。それはハリソンフォードにはハンソロ、インディジョーンズ、ショーンコネリーにはジェームスボンドという芸名以外に役名というもうひとつの情報が付随しているからなんですね。

 

④混乱
外出してから家のドアを閉めたかな?ガスの元栓は閉めたかな?という記憶のエラー。
またデジャブという現象も記憶の混乱の一種。実際に経験した事と想像したことの区別がつきにくくなっているという状態ですね。「フレゴリ錯覚」というものもあるそうです。これは見知らぬ人が、自分の知人や有名人の姿に見えてしまうこと。怖いですね。

 

⑤暗示
本人の思い込みや催眠術などの暗示により記憶が改変されてしまうこと。やっていない罪を執拗にやったはずだと言われ続けて記憶自体が変わり自白する場合などですね。
そういう大げさなことでなくともこの暗示による記憶の改変はけっこう多いと思います。

 

⑥混乱
記憶が何らかの事情の影響を受けて混乱してしまい記憶自体が改変してしまうこと。現在の状況に調和させるため、認知的不協和を解消するため、または自分に都合の良いように過去の記憶を改変することですね。

ただしこのような改変はより良く生きていくための手段ともなりますね。例えば自分を実際よりも高く見積もる「肯定的幻想」はある程度であれば楽しく生きる手助けになるし望ましい記憶の改変。またステレオタイプによる記憶の混乱は犯罪の目撃証言などにおいて「行動による罪」ではなく「関連づけによる罪」を生む可能性もありますが、日常生活においては過去の経験、出来事などを一般化して有用なものにすためにある脳のシステム。

 

⑦つきまとい
忘れてしまいたい記憶がずっと忘れられないという状態。特に強い感情を伴った記憶はずっとつきまといやすい。また、銀行強盗をされた銀行の行員が犯人の顔は憶えていないのに突きつけられた拳銃の詳細まで記憶しているという「凶器注目効果」というものもあるそう。この記憶のつきまといは生存を直接脅かす危険を忘れないためにある脳の機能のひとつ。
しかし不必要なつらい記憶の繰り返し再生を頭の中だけで行い続けるのは良くない。できれば他者に話す、または文章として言語化する、そして同様な体験をしたもの同士で共有しあう、というのがやっぱり有効だそうです。

 

以上この本では記憶のエラーを7つに分類しています。まぁ人間、基本的には間違って記憶するし、忘れますね。それは仕方ない。それに思い出したとしても勘違いして改変された記憶だったりすることもある。だけど。それは脳の欠陥ではない、というのが本書での著者の主張になります。

 

「記憶は現在のために過去を書き換え、
現在の経験を将来必要となったときのために貯え、
そして望むときに過去を再体験させてくれる。
ときに問題を起こすものの、
それは欠点であると同時に長所でもある。
記憶は私たちの心と世界の間を時間を超えて橋渡ししてくれる。」


忘れる事が出来るというのは情報の出口があるという事ともいえますね。もしもこの「忘れる」という排出装置が人間になかったとしたらどうなるか?おそらく日に日に頭の中が重くなって大変でしょうね。ずいぶんと毎日疲れそうです(笑)ということであまり物忘れを気にして落ち込むよりもそういうものだと覚悟して(笑)生きていったほうが良さそうです。忘れてしまってポカーンと空いた脳の隙間にまた新しい何かがやってくるのを期待して!!
2017/09/12