世の中のストーリーを10に分類すると面白い
私は趣味でちょっとした小説を書くんです。で、参考用に、映画シナリオの書き方の本なんかもよく読むんですが、面白い本がありました。
- 作者: ブレイク・スナイダー,菊池淳子
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本
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この本の中に著者独自の映画のジャンル分けというのがありまして面白いんです。
①家の中のモンスター
具体的な映画の例
「ジョーズ、エイリアン、危険な情事、ジュラシックパーク、13日の金曜日、危険な情事・・・」
このジャンルの根底にあるのは「危ない!やつに食われるな!」という、人間の原始的な意識を刺激するものだということです。怖いけど観ずにはいられない、という心理が働くんでしょうね。
②金の羊毛
具体的な映画の例
「スター・ウォーズ、オズの魔法使い、バック・トゥ・ザ・フューチャー・・・」
主人公は何かを求めて<旅に出る>のだが、最終的に発見するのは別のもの=自分自身というストーリーですね。何かを探すと言う意味で泥棒ものや宝探しもの、また任務遂行ものも含まれるそうです。
③魔法のランプ
具体的な映画の例
「ライアー・ライアー、ブルース・オールマイティ、ラブポーションNo9、フォーチュンクッキー・・・」
夢や願い事が叶うことは気分がいいし原始人でもわかるくらい単純で理解しやすいので、ヒットしやすい。主人公は最終的に、魔法よりも普通の人間でいるのが一番だと気づくようになっている。現実には魔法なんてありえないのだから、最後には「一番大切なのは、道徳に適った行いをすることだ」という教訓が用意されている
④難題に直面した平凡や奴
具体的な映画の例
「ブレーキ・ダウン、ダイハード、タイタニック、シンドラーのリスト・・・」
どこにでもいそうな奴が、とんでもない状況に巻き込まれる。観客自身が、自分にも起こり得るかもしれいないと考えるので、関心を呼ぶ。普通の人間が勇気を振り絞って、解決しなければならない問題を用意する。状況がミスマッチなほど、主人公が平凡なほど、問題は大きく見えて観客の関心をひく。
⑤人生の節目
具体的な映画の例
「テン、普通の人々、酒とバラの日々・・・」
主人公が直面する苦しい経験は人生という名の力によることが多い。どんなにベストな選択をしていても、人生には目に見えない、理解しがたい<モンスター>が襲ってくるときがある。アルコールや薬物中毒、思春期、中年の危機、老い、失恋、傷心のストーリー、愛する者の死。モンスターが主人公に忍び寄り、主人公はその正体に気づき(自分の力を上回る強烈な力=人生というもの)を、受け入れることによって最後に勝利を収めるのである。
⑥バディとの友情
具体的な映画の例
「ジムキャリーはMrダマー、レインマン、ET・・・」
恋愛物もこのジャンルに含まれる。最初、<バディ>はお互いを嫌っているが、旅をしていくうちに相手の存在が必要で、ふたりそろって初めてひとつの完結した存在になることがわかってくる結末近くになると<すべてを失って>の瞬間がやってくる。連れ添ったバディとケンカになり、あばよ!ってことになる。ただしこれは本当の別れじゃない。お互いエゴを捨てて仲良くするしかないことを最終確認するためのきっかなのだ。
⑦なぜやったのか?
具体的な映画の例
「チャイナタウン、チャイナシンドローム、JFK、インサイダー・・・」
なぜやったのか?は主人公の変化を描くものではない。犯罪が事件として明るみに出た時、そに背後にある想像すらしなかったような人間の邪悪な性質が暴かれるというジャンル。
⑧バカの勝利
具体的な映画の例
「フォレスト・ガンプ、デイブ、天国から落ちた男、アマデウス・・・」
バカの勝利の基本原則は、負け犬のバカに対してもっと大きくて権力の悪者、たいていは体制側が存在するということ。ところがそんなバカが体制側の連中をやきもきさせるのを見ると、観客にもなんだか希望がわいてくる。アウトサイダーが勝利すると、観客もなんだか自分が勝利したような快感を味わうのである。
⑨組織の中で
具体的な映画の例
「カッコーの巣の上で、アメリカン・ビューティー、ゴッドファーザー・・・」
組織の中では、個人よりも集団を優先することの是非を描いている。集団に対する忠誠を誓えば、ときには常軌を逸した行動をとったり、さらには自分の命すら捧げざるを得ないときもある。人間は大昔からずっとそうして生きてきた。新しく組織に入ってきた人物(新人)から語られることが多い。観客は組織に関して何も知らないという点で、この新人と同じ立場にいる。組織のイカれた実態も次第に暴かれていく。要するに<俺とアイツはどっちがイカれているか?>ということなのだ。集団のために自分を犠牲にすることがいかに狂気か。
⑩スーパーヒーロー
具体的な映画の例
「グラディエーター、スパイダーマン、ビューティフル・マインド・・・」
超人的な力を持つ主人公が、ありきたりで平凡な状況に置かれる。スーパーヒーローの物語は、人と<違う>とはどんなことか、独創的な考え方や素晴らしい能力を妬む凡人と向き合わねばならないとはどういうことかを、観客が共感できるように描く。観客はPTAで違った意見を行ったらこき下ろされたとか、会社の会議で大胆な発現をしたら失笑されたとか。誤解されたり、周りから理解されないヒーローの苦しみに共感しているのである
以上のジャンル分けでよく知っているストーリーはどうなんだろう?と映画以外のお話しもどこのジャンルだろうと、考えてみるのも面白いですよね。
例えばドラえもんはやっぱり③の魔法のランプの典型ですよね。魔法みたいな道具を手にした、のび太は最後にはしっかり罰を受けますしね。それから村上春樹の羊をめぐる冒険はその名のごとく金の羊毛だよな、とか。
で、著者としては、このジャンル分けが正確で正しいということでなく、自分のストーリーを作る際に、今自分が書いているストーリーに近くて参考になるのは、どの既存作品なのか?を見つけ出すために有効なのだということです。ちなみに著者が一緒に仕事をしたことがあるスティーブン・スピルバーグは膨大なストーリーが頭の中にジャンル分けされていて、いつでもどんな作品でも引用可能だということです。
それから蛇足ですが、自分がよく見たくなるジャンルというものを分析してみると、今、自分がストーリーという虚構に何を求めているの?そのあたりの自己分析にも有効かもしれませんね。ついつい⑩のスーパーヒーローものばかりみたくなるのは、周りにあまり理解されない辛さを心の奥に感じてるのかな?とか。②の金の羊毛タイプを観たくなるというのは、現状から脱したいという気持が強いのかなとか・・・。