天然誤読生活

誤読とそら耳を恐れない書評と音楽レビューとトンデモ理論を書き散らすハートに火をつけて(くれるかもしれない)ブログです。

ビーチ・ボーイズと村上春樹

 

意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)

 

 村上春樹の文章がいちばん染みるのは「悲劇」を描いているときだと思う。お涙ちょうだい的な「悲劇」ではない。どうしようもない矛盾やミスマッチ感を抱え込んだ人の悲しみという「悲劇」だ。

そんな「悲劇」を書くときの春樹さんの文章には奇妙なほどの透明感がある。その文章は真冬の小川の水のように透明でキラキラしているけれど、触ってみると意外にそれほど冷たくはない。熱くはないけれど、人肌くらいの温かみはある。今日はそんな特徴がよく出ている一冊を紹介したい。

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森博嗣という天才ならいろいろな問題についてこう考えたりするのか?と知ることができる一冊

 

人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)

人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)

 

 昨日紹介した戦略読書日記の中に柳井さんの戦略を分析しているところがありました。それによると常に具体的思考と抽象的思考の間を高速で行き来して、最適な経営判断を得る戦略だという楠木さんの分析でした。

これは文章を書くときにもとても有効な考え方で抽象と具体を交互に行き来すると、立体的に伝わりやすい文章になると聞いたことがあります。ということで今回はそのうちのひとつ抽象的思考の力をどう高めればよいのか?という事を書いた本を紹介いたします。

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ゴーゴリという文豪のぶっ飛び具合にぶっ飛ばされた!

 

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

 

 ゴーゴリというと名前だけは聞いたことがあるけれど全く読んだことがなかったロシアの文豪??ドストエフスキーゴーゴリがいたから自分の小説が書けた、みたいなことを言っているくらいのすごい偉い人なんだろうなぁという印象だけはあった。で、今回初ゴーゴリだったわけですがぶっ飛びました。なんだ、このバカバカしさは!!これは凄い。笑えます。今の作家でいうと町田康なんかは近いのかも。でもぶっ飛び具合のスケールが違う。

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ストーリーとして仕事や生き方を考えてみたくなる書評集

 

戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>

戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>

 

 この本の著者の楠木さんという方は、特に事業を行っているというわけでもなくて、
【戦略】というものが、大好き?で色々と研究しているようです。そういう立ち位置って面白いなあと思ったんです。

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前田日明的生き方と佐山サトル的生き方の対比がドラマチックな一冊

 

1984年のUWF

1984年のUWF

 

 世の中の人を大きくふたつに分けると「矛盾」に対してうだうだ考えてしまう人と、「矛盾」を簡単にスルーできてしまう人がいると思う。これは中二病を解消出来たか、
出来ていないかという程度の問題ではなくて、もっと深い部分での矛盾に対しての感性の違いだ。本書は1980年代のプロレス界といういかにもマニアックな世界を描いている。だからプロレスに興味のない人が手に取ることはない一冊だろう。だけれども前述した矛盾に対する感性の違いという観点から見るとまさに対象的なふたりの若者の物語として読むことが出来る。その意味では誰が読んでも面白いのではないのかと思う。

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大人と子どもの違いを解説する内田樹さんの理屈が会心の一撃すぎる

 

邪悪なものの鎮め方 (文春文庫)

邪悪なものの鎮め方 (文春文庫)

 

 この本を読んで100回くらい『うわー!そーゆー事なのかー!だよな!だよな!』と膝を叩きました。今日はその内のひとつの考え方をご紹介します。

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あの2001年宇宙への旅さえ楽しめるようになる映画解説の決定版的な一冊

 

 映画の絶対的な名作ってありますよね。例えば「ベン・ハー」や「風と共に去りぬ」とか。このあたりって誰がいつ観ても面白いし、いろいろと考えさせてくれる映画ですね。

ところが同じように名作として語り継がれている「2001年宇宙の旅」とか「地獄の黙示録」や「タクシードライバー」あたりになるとどうでしょうか?難しいというか意味不明な部分が多くて、またはどうしてそんなに人の負の側面ばかり強調するのか?みたいなところもあり、正直言って「これって本当に名作と言えるのか?はっきり言って面白くないんじゃないのか?」と感じてしまう人も多いのではないでしょうか?

そんなふうに思いつつも実は自分の「映画の見方」がイマイチなのではないのか?実は上記のような意味不明な作品の凄さを知る秘密があるのではないのか?と思っている人にはこの本がオススメです。

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